研究課題/領域番号 |
20K03683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉野 正史 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 名誉教授 (00145658)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | transseriesのボレル総和法 / transseriesの第一積分 / ハミルトン系 / 非可積分性 / バーコフ変換 / 小進化項を持つ3種ロトカボルテラ方程式 / 大域的ボレル総和法 / 解の爆発 / 動く特異点 / 動く分岐点 / バーコフ変換理論 / ボレル総和法 / 爆発解 / 非線形放物型方程式 / パンルベ性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、パンルベ性を持たないハミルトン系の動く分岐点を持つ解の構成とその特異点の構造を主に研究する。この方程式達は、数理物理であらわれる非線形波動、非線形放物型、非線形シュレディンガー方程式等の爆発解の構成における自己相似解の満たす方程式として現れる。研究では、まず自由度が2の場合の動く分岐点を研究し、特異点が複数あるような解を構成・解析したのち、一般の自由度の場合を研究する。従来の研究と比較して特徴的な点は、力学系の視点からのアプローチすなわちバーコフ変換の一般化を用いて解析することにある。解析的な手法として偏微分方程式に対するボレル総和法理論を新しく構成して用いる。
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研究実績の概要 |
今年度の主目的はハミルトン系のバーコフ理論にあらわれる変換方程式の可解性を研究することであった。これにより非線形波動、非線形放物型、非線形シュレディンガー方程式等の球対称爆発解の構成であらわれる方程式達を含むあるハミルトン系にたいして、動く特異点を持つ解を構成できる。本年度重点的に研究したのは、発散級数である超級数を用いて形式解を構成し、ボレル総和法理論を証明することである。研究実施計画は主に超級数のボレル総和法理論を拡張して、変換方程式の可解性の理論構成を実行することであった。具体的な成果は以下の通りである。 1)解析的非可積分なあるハミルトン系に対して超可積分性を証明した。証明はハミルトン系の第一積分を発散する超級数として構成し、偏微分方程式に対するボレル総和法理論を拡張してもちいた。この結果は京大数理研の別冊に出版予定。 2)変換方程式の可解性を初等関数あるいは超級数とボレル総和法を用いて証明した。より詳しく述べると a) 偏微分方程式に対するボレル総和法を拡張して変換方程式の可解性を証明した。 b) 超級数を用いて特異性を持つ解をハミルトン系に対して構成した。結果の一部は京大数理研紀要に出版予定。 3)スペインでの国際会議(FASNET21)での講演結果を発展させ論文を作成しアメリカ数学会から出版した。2022年9月に北大で開催された日本数学会秋季総合分科会の一般公演で報告をした。京都大学の力学系セミナーで研究報告をした。ウルム大学にW. Baser教授を訪問し同氏および同大学のスタッフと研究討論を行った。これにより超級数のボレル総和法と接続問題に関する世界の先端の研究者との情報交換を実行した。 4)3種ロトカボルテラ系に進化生態学的効果を取り入れた方程式系の解析から小進化のダイナミクスを示した。ここで手法はボレル総和法と関連する。論文投稿済み。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究成果をもとにバーコフ変換にあらわれる変換方程式の可解性をしめし偏微分方程式の球対称特異解を構成した。これは論文として出版した。この研究をさらにすすめ、今年度の研究計画では超級数を用いた形式解の構成とそれのボレル総和可能性と可解性を証明することを目的として研究を行い、おおむね期待した結果を得た。また前年度からの問題である動く真性特異点の研究に関しては、超級数を用いることで特異解の構成への手掛かりがえられた。従来の方法に比較して新しい点は、超級数と総和法を用いた点であり、それによりハミルトン系の可解性をしめせた。これらの結果はまだ未解明な点も多く、世界でも数理物理や量子論で関連した研究が進められている。 また偏微分方程式に対する総和法の応用として解析的非可積分ハミルトン系の超可積分性を証明して論文を発表した。全体として研究は想定した結果が出ている点、解明が十分でない新しい問題があり、次年度に研究を継続する。 対面での研究会や国際会議はほとんど自由に行えるようになり、日本数学会への参加と講演、および京都大学のセミナーでの研究報告をした。またウルム大学に出張して関連するテーマで世界の最先端の研究者と研究討論をおこなった。他方、対面での国際会議は計画通りには進まなかった。国際会議をポーランドのBanach Centerで開催する予定で計画が進んでいたが、感染症と戦争のため国際会議の開催は延期された。これは次年度に開催予定であり、参加と招待講演を予定している。さらにBanach Centerで同時期に開催されるworkshop にも招待講演を予定している。これにより、国際会議での発表もほぼ計画どおりに進む予定である。これらのことを総合的に考え研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究期間の最終年度になるので、得られた研究成果を論文としてまとめ公表したり、国際会議等で発表する。さらに研究を通して認識されたハミルトン系の超級数解の構成と総和可能性の新しい展開を追求して本研究課題に役立てる。実際、前年度までの成果をもとにして超級数解の構成とそのボレル総和可能性を一般的な状況の下でしめし、接続問題と可積分性を研究する。また力学系への応用にも取り組む。すなわち非可積分系のtransseriesのクラスでの超可積分性を研究する。これは世界的に研究が進んでいる「resurgency」に対応したテーマでもある。その他、進化生態学への漸近解析の応用として、進化項を持つ3種ロトカボルテラ方程式系の小進化の効果による新しいダイナミクスの研究を数値計算の立場からすすめる。 研究実施の方策としては、国内での学会と研究会、国際会議には積極的に参加して講演および情報の収集を行う。国外での研究会あるいは国際会議への参加については、講演にかんしてはポーランドでの国際会議での講演とBanach Centerで開催されるworkshopにおいて研究討論および研究発表をおこなうことを予定している。また前年度のウルム訪問による研究交流と同様に、国内外の研究者を訪問し研究討論を行うことを計画している。その他、新しいテーマと手法についても積極的に取り組み、有効性の検討を継続しておこない研究課題の新しい発展を追求する。
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