研究課題/領域番号 |
20K03691
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00465387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 変分法 / 摂動法 / 楕円型偏微分方程式 / 連立楕円型偏微分方程式 / シュレディンガー方程式 / エネルギー最小偶関数解 / 定在波解 / 最小化問題 / 臨界点理論 / 解の多重存在 |
研究開始時の研究の概要 |
自然界のさまざま現象を記述する微分方程式は変分原理に基づくものが多い。この研究では変分原理に基づく連立非線形楕円型偏微分方程式系の解構造を数学的に研究する。研究の道具としては、変分原理に直接アプローチをして解の存在を保証する変分法を用いる。また比較的よく解構造が分かっている方程式からの摂動とみなして解構造を解明する摂動法を用いる。 特に本研究では、連立方程式の相互作用の項に引力的な項と斥力的な項が混在するときの解の存在や解の形状について研究する。
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研究実績の概要 |
2021年度に引き続き、2022年度も全空間上で定義された3つの楕円型方程式から成る連立楕円型方程式の相互作用項に引力的な項と斥力的な項が混じっているときのエネルギー最小解の研究を行った。方程式が有界領域上で定義されている場合は、従来の研究によりエネルギー最小解の存在が知られていた。他方、方程式が全空間上で定義されている場合、相互作用項に斥力的な項があると、エネルギー最小解の存在は期待できないことも知られていた。2021年度のユタ州立大学(福州師範大学)のZhi-Qiang Wang教授との共同研究により、空間次元が2次元または3次元のときは、関数空間を偶関数に制限するとエネルギー最小偶関数解が存在することを発見した。2022年度はこの研究を論文として纏めた。その過程において同様の問題を考察していた西北工業大学Jiankang Xiaも研究に加わり共同で論文を執筆した。この論文は現在投稿中である。 さらに2021年度の研究において、この手法が全空間上で定義された2つの楕円型方程式から成る連立方程式の相互作用項が斥力的な場合にも適用できることもわかった。すなわち、方程式が全空間上で定義されていて相互作用項が斥力的な場合、エネルギー最小解の存在は期待できないが、空間次元が2次元または3次元のときは、関数空間を偶関数に制限するとエネルギー最小偶関数解が存在し得ることを証明した。ただし、2021年の実績概要で記載したエネルギー偶関数解の非球対称性については、その証明に誤りがあった。現在のところ、エネルギー最小偶関数解の非球対称性は分かっていない。2022年度の研究では、空間次元が1次元の場合も、相互作用項の係数関数に条件を加えるとエネルギー最小偶関数解が存在し得ることも証明し、これらの結果を論文に纏めた。この論文は学術誌「Nonlinear Analysis」への掲載が決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全空間上で定義された連立楕円型方程式の相互作用項に斥力的な項が含まれる場合、従来の研究ではエネルギー最小解の存在は期待できないとされていた。他方、関数空間に球対称性を加えると、エネルギー最小な球対称解が存在することも知られていた。この違いは技術的には、関数空間に球対称性がない場合、関数空間間の埋め込みのコンパクトではないのに対し、関数空間に球対称性があると埋め込みがコンパクトとなるからである。2021年度からの研究の研究により、関数空間に球対称性より弱い偶対称性を加えること、埋め込みがコンパクトではないにも関わらず、エネルギー最小な偶関数解が存在し得ることがわかった。 この全空間上で定義された連立方程式は、連立シュレディンガー方程式の定在波解を記述する方程式であるため、重要な研究対象である。また、埋め込みのコンパクト性がないにも関わらず、エネルギー最小解を得る方法は技術的にも注目される。そのため、2022年度は全空間上で定義された連立楕円型方程式の相互作用項に斥力的な項が含まれる場合のエネルギー最小対称解の研究を行った。これは当初の研究計画には明示的に含まれていなかった研究であるため、有界領域上の問題の研究はやや遅れている。 また2020年度から続く新型ウィルスの影響により論文執筆が遅れていたが、論文1本の掲載が決定し、論文1本を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
全空間上で定義された連立楕円型方程式の相互作用項に斥力的な項が含まれる場合、従来の研究ではエネルギー最小解の存在は期待できないとされていた。他方、関数空間に球対称性を加えると、エネルギー最小な球対称解が存在することも知られていた。2021年度と2022年度の本研究の研究成果では、関数空間に球対称性より弱い対称性を加えただけでも、エネルギー最小な対称解が存在し得ることがわかった。この研究は当初の研究計画には明示的には含まれていなかったが、全空間上で定義された連立方程式は、連立シュレディンガー方程式の定在波解を記述する方程式であるため、重要な研究対象である。そのため、関連する研究として、以下の3点について研究を行う。 1.2022年度の研究で得られた偶対称解の非球対称性が証明できないか考察する。 2.2022年度の研究では、関数空間に加えた対称性は、偶対称性だけであったが、今後の研究では、他の対称性を加えた場合のエネルギー最小解の存在についても考察する。 3.2022年度の研究において、2つの方程式から成る連立方程式では、空間次元が1次元の場合も、相互作用項の係数関数に条件を加えるとエネルギー最小偶関数解が存在し得ることも証明した。この結果を踏まえ、空間1次元の相互作用項に引力的な項と斥力的な項が混じっている3つの楕円型方程式から成る連立楕円型方程式のエネルギー最小偶対称関数解の存在について考察する。 さらに当初の研究計画にある次の研究を進める。3次元空間上で定義された3つの楕円型偏微分方程式から成る連立方程式の二つの相互作用項の係数が負の数で十分小さく、残りの一つの相互作用項の係数が正の数で十分大きいときの非球対称解の多重存在を示す。先行研究では少なくとも6個の非球対称解の存在が示されているが、本研究では任意の個数の非球対称解の存在を示す。
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