研究課題/領域番号 |
20K03695
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河邊 淳 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50186136)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非加法的測度 / Choquet積分 / Sugeno積分 / Shilkret積分 / Lorentz空間 / 性質(C) / 完備性 / 可分性 / 可測関数空間 / 開球条件 / 上からの自己連続性 / 疑距離生成性 / 零加法性 / 順序連続性 / 非線形積分 / 積分の収束定理 / 関数空間 / ショケ積分 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ショケ積分,菅野積分,シルクレット積分などの非線形積分が共通してもつ摂動性を用いた統一的理論展開ではなく,個々の非線形積分がもつ特性に着目することにより,概収束,測度収束,概一様収束する関数列に対して,単調収束定理,有界収束定理,優収束定理,ビタリの収束定理などと同等の積分収束定理が成立するために非加法的測度に課すべき必要十分条件を見出し,個々の非線形積分の特性や関数列の収束態様の違いを反映した形で積分収束定理を精密化する.また,これら精密化した積分収束定理を用いて,非線形積分が定める関数空間の完備性や可分性などの位相的性質を解明する.
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研究実績の概要 |
1.実数値可測関数全体からなる線形空間上には,非加法的測度μを用いて定義されたSugeno積分型,Choquet積分型,Ky-Fan型,Dunford-Schwartz型の球(ball)の他に,AssaとZimperが導入した距離関数を用いない球から導入された5つの位相が提案されている.この研究では,これら5つの位相を比較し,次の結果を得た.(a)μが有限ならば,これら5つの位相はすべて一致する.(b)これらの位相が第1可算公理を満たし,位相に関する収束とμ-測度収束とが同値となるための必要十分条件は,球が位相の基本近傍系となることである.(c)μが上から連続かつ上から自己連続ならば,AssaとZimperが導入した球は常に開集合となる. 2.非加法的測度μによるSugeno積分を用いて定義したLorentz空間(以下ではSL空間とよぶ)の性質を調べ,次の結果を得た.(a)μが擬距離生成的かつ下から単調自己連続で性質(C)をもてば,SL空間は完備である.(b)μが擬距離生成的かつ順序連続で可算基をもてば,SL空間は可分である.(c)Lorentz型の擬距離が定める位相(以下ではSL位相という)に関して,開球が開集合となるための必要十分条件はμの上からの自己連続性,閉球が閉集合となるための必要十分条件はμの下からの自己連続性である.(d)SL位相はLorentz型の関数空間を定める際の指数によらずただ一つに定まる.(e)SL空間は,μが上から自己連続ならばT1空間,μが上から自己連続かつ擬距離生成的ならばHausdorff空間,μが自己連続ならば正則空間,μが反対称緩劣加法的ならば正規空間となる.(f)μが劣加法的ならば,SL空間は距離付け可能である.(g)μが順序連続かつ上から自己連続で緩劣加法的ならば,SL空間は開球条件を満たす線形位相空間である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非加法的測度を用いて実数値可測関数全体からなる線形空間上に導入された5つの位相の比較に関する研究「Base topologies and convergence in nonadditive measure」,非加法的測度や非線形積分を用いて定義された関数空間の完備性と可分性に関する研究「The completeness and separability of function spaces in nonadditive measure theory」,Sugeno積分が定めるLorentz空間の位相及び線形位相的性質に関する研究「Topological and topological linear properties of the Sugeno-Lorentz spaces」が国際雑誌Fuzzy Sets and Systemsに公表された.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画・方法に基づき,下記の研究を推進する予定である. 1.2022年度までの研究で,非加法的測度や,Choquet積分,Shilkret積分,Sugeno積分などを用いて様々な関数空間とその上の位相を定義し,それら関数空間の完備性と可分性を調べた.2023年度は定義した位相が満たす分離公理(Hausudorff性,正則性,正規性など)を非加法的測度の特性で特徴づける. 2.非線形積分が定めるLp空間やローレンツ空間に関して得られた結果を,実解析学における関数空間論の諸問題の解明に応用するとともに,ゲーム理論や期待効用理論などの非加法的測度論の応用分野への貢献の可能性を探る. 3.得られた成果を,国内外で開催予定の学会やシンポジウムで発表し,広く周知するとともに,参加者との質疑応答や議論を通じて,新たな切り口での研究指針を見出す.
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