研究課題/領域番号 |
20K03704
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 京都教育大学 (2023) 長崎大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
熊崎 耕太 京都教育大学, 教育学部, 教授 (30634563)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 多孔質媒体 / 自由境界問題 / 偏微分方程式 / 微視的領域 / 巨視的領域 / 数理モデル / 解の存在と一意性 / 偏微分方程式と自由境界問題の連立 |
研究開始時の研究の概要 |
寒冷地においては、コンクリート内部の細孔に存在している水分が凍結融解を繰り返し、細孔の構造が変化することによって、物質表面のひび割れへと発展する。本研究では、このような多孔質媒体の階層的な変化を、物質で占められた領域における偏微分方程式と細孔領域における自由境界問題によって表現し、それらを連立させた問題の解の存在と一意性を確立する。また、こうした問題の解の持つ性質や構造を明らかにし、両領域の相互変化・作用を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究では、多孔質媒体全体における変化を偏微分方程式、内部の微視的な変化を自由境界問題によって表し、それらの連立系の適切性を考察することにより、両変化を同時に扱うことのできる数学的枠組みを構築することが目的である。本年度得られた結果は以下である。 1. 多孔質媒体全体では、相対湿度の変化を表す拡散方程式を考える。また、多孔質媒体の1点に対して、1つの細孔に見立てた1次元区間を対応させ、その区間内では水分量の変化を表す自由境界問題を考える。昨年度は、時間局所解の延長による方法を用いて時間大域解を構成し、さらに比較原理を用いて解が時間大域的に有限となることを示した。これらの結果と質量保存則を用い、各点における相対湿度の流入量が時間大域的に有限となることを示した。これらの評価を用いて解の時間大域的な一様評価を導いた。 2. 1.で得られた一様評価を用いて、連立系の解が時間無限大において定常問題の解に収束することを示した。その結果として、まず拡散方程式の解は物質全体の初期水分量から各点における流入量の総和を除いた値の平均に、自由境界問題の解は1次元区間内の初期水分量と各点における流入量に応じた値に収束することがわかった。 3. 本問題では、巨視的領域では強解、微視的領域では弱解として解を構成した。微視的領域で弱解となっている要因は、微視的領域における自由境界問題の解の評価にある。この評価の導出方法を見直すことによって、微視的領域において強解を構成するための方策を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗状況は以下である。 物質全体(巨視的領域)における相対湿度の変化を偏微分方程式、細孔内部(微視的領域)における水分量の変化を自由境界問題によって表した連立系の解に対して、時間大域的な評価を導出し、この評価を用いて解の時間大域的な挙動を示すことができた。これまでの研究では、微視的な領域が時間に伴って変化しない場合に解の時間大域的な挙動が示されているが、今回のような微視的な領域が時間に伴って変化する場合では解の時間大域的な挙動に関する結果はない。そのため、今回得られた結果は重要な成果であると考える。これらの結果から、本年度の進捗状況として順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の進捗状況に基づき、次年度の研究を以下のように設定する。 物質全体(巨視的領域)の変化を表す偏微分方程式と内部の細孔(微視的領域)の変化を表す自由境界問題との連立系に対して、巨視的変数、微視的変数ともに強解となるような解の存在を示す。方針として、まず滑らかな関数を用いた適切な近似問題を考え、この問題に対する解の存在を示す。その後、この解に対する近似引数によらない評価を導き、近似引数の極限として解の構築を試みる。
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