研究実績の概要 |
q 元体上の長さ(符号長) n, 次元 k, 最小重み d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界を決定する問題は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであり、最適線形符号問題(Optimal Linear Codes Problem)と呼ばれる。符号の誤り訂正限界を求めるには、[n,k,d]q 符号が存在するような最小重み d の最大値 d_q(k,d) を求めれば良いが、これは [n,k,d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k,d) を求める問題と等価である。線形符号が拡張可能であるための条件を射影幾何の手法を用いて新たに求め、その研究によって得られた知見を活用して最適な線形符号の長さの最小値を確定したり、まだ発見されていない最適な線形符号のコンピュータによる探索や構造解析等を通して、最適線形符号問題の解決を目指すのが本研究の主目的である。 本年度は、主に q元体上の4次元線形符号の最適線形符号問題(n_q(4,d) の決定問題)について取り組み、有限射影空間 PG(3,q) 上の hyperbolic quadric を活用した4次元の最適線形符号の新たな構成方法を見出した。また、「局所的に重みが限定される」という概念を新たに考案し、最も簡単な「局所的に符号語の重みが q を法として2種類しかない」場合を解決し、Griesmer 符号の非存在証明に応用できることを示した。これらの成果については、それぞれ国際学術雑誌に発表した。更に、韓国の研究者と共同研究を行った5次元線形符号の存在限界について、成果を論文にまとめる作業を開始した。
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