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ランダムネスを用いた非線型偏微分方程式の陰的数値解法の開発と数学モデルへの展開

研究課題

研究課題/領域番号 20K03738
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分12040:応用数学および統計数学関連
研究機関東京都市大学

研究代表者

畑上 到  東京都市大学, 共通教育部, 教授 (50218476)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
キーワード陰的スキーム / 反応拡散系 / Gray-Scott方程式 / 確率微分方程式 / メルセンヌ・ツイスター擬似乱数 / 線形合同法 / FitzHugh-Nagumo方程式 / ランダムネス / グレイースコット方程式 / フィッツーフー-南雲方程式 / 陰的数値解法 / 非線型偏微分方程式 / 数学モデル
研究開始時の研究の概要

次世代スーパーコンピュータ等に代表される近年の高パフォーマンス大型計算機の急速な発達と可視化技術の進歩により,水や空気の流れや生体系の分子構造等の複雑な現象を,直感的に把握できるようになっている.しかし,現象を記述している微分方程式を計算機を利用して数値的に解く場合,真の解とは定量的ばかりか定性的にも異なる解(幻影解)を得てしまう恐れがある.
本研究では,数値解法で近似的に得られた幻影解も含む複雑な解構造に対して,確率論で導入されるランダムネスを導入して数値的に検証し,より信頼性の高い数値解を得る上で必要となる本質的な要因を探求し,複雑な現象を高い信頼性で再現する効率的な方法の構築を行う.

研究実績の概要

2023年度は時間刻みを小さくとってGray-Scott方程式を陰解法で解いた場合に,付加するランダムネスの種類が解パターンの構造に与える影響について研究を行った.時間刻みを小さくした場合には付加するランダムネスの影響をより鋭敏に受けることになるため,数値解の構造はランダム項としての擬似乱数の特性に大きく依存する.考えられる影響としては,擬似乱数の周期が解構造の時間変化へ及ぼす長時間的な影響と擬似乱数の偏り等の空間的局所的な構造変化への影響の2点がある.2023年度では古くからよく利用されてきた線形合同法と近年有力な擬似乱数として利用されているメルセンヌ・ツイスター擬似乱数を取り上げ,それぞれの擬似乱数の特性の解パターンへの影響について検討した.まず周期の長短については,周期の短い線形合同法では,解パターンにおいても時間的だけでなく空間的にも一定の周期的な構造が見られることがあるのに対し,非常に周期の長いメルセンヌ・ツイスター法ではそのような周期的な構造は見られないことが確認された.一方,それぞれの擬似乱数の異なるシードが解パターンに与える影響についても調査を行った.その結果,メルセンヌ・ツイスター擬似乱数付加の場合には,シードの違いに関係なく間欠的なカオスから擾乱に起因する時空カオスのパターンダイナミックスサイクルを外れた変動スポット解への連続的な分岐過程が見られたが,偏りのある線形合同法の場合には,シードの違いにより種類の異なる複雑な分岐構造が現れた.さらに線形合同法の場合は,解パターンの変化において付加する擬似乱数の大きさによる分岐過程と物理的なパラーメータの変化による分岐過程に類似性が見られることが明らかになった.なお以上の研究成果については,環瀬戸内応用数理研究部会第27回シンポジウムおよび日本応用数理学会第20回研究部会連合発表会において口頭発表を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2023年度においては,2022年度までに導入したサーバーと数式処理ソフトをフルに活用してGray-Scott方程式の解パターンの構造に対する擬似乱数の特性の影響に焦点をあてて数値実験による研究を行った. また計算結果を可視化するソフトを活用し,解パターンの動画による詳細な解析を行った.その結果,擬似乱数の周期や偏り等によって,パターンダイナミックスサイクルの連続的な分岐過程や,新たな解パターンへの分岐過程を視覚的に捉えられた.これらの付加する擬似乱数の特性による解パターンへの依存性の解明は,数値誤差のもつランダム性,特に周期的な要因と局所的な依存性を考察する上で重要であり,信頼性の高い陰的なスキームを構築する上で不可欠の要素であることが明らかになった.しかしながら,ランダムネスの特性の巨視的な影響については明らかにできた一方で,その詳細である新たな解パターンの出現や解パターンの分岐の原因については解明できていない点も多く,その意味で数値誤差を制御する新たな方法の構築には到っていない.従って研究を遂行していく方向性としては問題ないと判断できるものの,新規スキームの開発のための具体的方策を探る上ではもう少し綿密な検証作業が必要であり,その点では若干の遅れがあると思われる.

今後の研究の推進方策

陰解法の時間刻みの大きさと付加するランダムネスの大きさの関係において,擬似乱数の性質による解パターンの周期的,空間的局所性への影響は,具体的な問題における誤差移入のタイプによる数値計算の信頼性を検証する上で重要である.また解パターンにおけるパターンダイナミックスのランダムネスの大きさによる分岐過程と物理パラメータによる分岐過程の類似性についてもまだ不明な点が多く,それらを明らかにしていく上で別の擬似乱数やパラメータ領域についても考察する必要がある.そのためには擬似乱数そのものの物理的特性が比較的明らかなものについて同様の検証を行っていくことが必要不可欠である.さらにこれまでは,解パターンにおいて幻影解との関係を調べる上で,数学的安定性解析が行いやすいこともあり,数値誤差が大きい1次精度のスキームで数値実験を行ってきたが,最終的に信頼性の高いスキームを構築する上では,2次精度以上のスキームで検証しなければならない.2024年度は離散力学系のカオスを利用した擬似乱数の研究者や確率論を専門とする研究者とのディスカッションを通じて,ランダムネス付加が解パターンの局所的な不安定化に与える影響について解析を進めるとともに, 最終的により精度が高く信頼性の高い陰的スキームの構築を目指していきたいと考えている.

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] 反応拡散方程式の数値解の分岐構造に対する付加擾乱の定性的依存性2024

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      日本応用数理学会第20回研究部会連合発表会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 短周期擾乱が付加された反応拡散方程式の数値解の分岐構造2023

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      第27回環瀬戸内応用数理シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 陰解法におけるランダムネスの長波長不安定化の抑制効果と特異的遷移過程への分岐2022

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      日本応用数理学会2022年度年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 陰解法におけるランダムネスが誘起する特異的遷移過程への分岐2022

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      環瀬戸内応用数理研究部会第26回シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 陰的解法の数値解の構造に対する時間刻みとランダムネスの影響2021

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      日本応用数理学会環瀬戸内応用数理研究部会第25回シンポジウム
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 幻影解が共存する陰的システムにおけるランダムネス付加の影響について2021

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      日本応用数理学会第17回(2021年)研究部会連合発表会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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