研究課題/領域番号 |
20K03760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 国立研究開発法人理化学研究所 (2020-2021) |
研究代表者 |
吉脇 理雄 大阪公立大学, 数学研究所, 特別研究員 (90613183)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 位相的時空間解析 / 2パラメータパーシステントホモロジー / ノイズ安定性 / 導来同値 / Auslander-Reitenクイバー / 区間表現 / 2パラメータパーシステントホモロジー |
研究開始時の研究の概要 |
位相的データ解析はデータ解析の中でも「データの形」に着目したものであり,その中でもパーシステントホモロジーを用いた手法は形の大きさなどの定量的性質を調べることができる.従来のパーシステントホモロジーの理論は1パラメータに対するもので,代数的な困難さが原因で時空間といった2パラメータデータにそのままでは適用できない.本研究の目的は位相的時空間解析にむけて必須の理論である2パラメータパーシステントホモロジーのデータのノイズに対する安定性を明らかにすることであり,その特徴は代数的な困難さを導来同値を用いて突破することにある.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は位相的時空間解析を確立するのに必須である2パラメータパーシステントホモロジーについて、データのノイズに対する安定性を明らかにすることである。より具体的には、導来同値を用いてより取り扱いやすいものへと帰着させる考えに基づいて、安定性の代数部分である代数的安定性定理を以下のように明らかにすることであった。(い) 2パラメータパーシステントホモロジーと導来同値な対象で代数的安定性定理を示すこと。(ろ)代数的安定性定理は、導来同値のもとで伝播すること。(は)代数的安定性定理は、導来圏から制限可能であること。(に) 2パラメータパーシステントホモロジーと導来同値な対象について、その導来圏へ(い)の結果を拡張すること。 2020年度は(い)、(ろ)、(は)を達成、2022年度に論文を出版。2021年度では(に)に取り組み、部分的に(ほ)2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し、代数的安定性定理を示した。昨年度にこれを全体に拡張するための策を改めて検討した結果、(へ)「区間表現の性質を明らかにすること」が必要となると判断した。区間表現は1パラメータパーシステントホモロジーでは出力であるパーシステンス図を与える。2パラメータでは一致しないが、区間表現による近似の可能性が示されており、その性質を明らかにすることが本研究に寄与すると考えたためである。今年度にかけて、上記(へ)について研究を行い、論文を2編出版した(doi.org/10.1016/j.jaca.2023.100007、doi.org/10.1016/j.jpaa.2023.107397)。前者で数値的に、後者では表現論的に区間表現を捉えることができたのは大きな進歩である。 なお、国際会議で発表を行った。加えて、方策の検討及び他研究者との交流の場として、オンライン研究集会を今年度も主催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画では、二年目に「2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し,ノイズに対して安定であることを明らかにする」こと、すなわち、研究実績の概要で述べた(に)とその結果として(ほ)を得ることに取り組むこととなっていた。三年目はそれを元に(b)既存研究との比較により、それらを包括した研究となっていることを明らかにする計画であった。2021年度は(に)(結果として(ほ)も)一部を達成できたものの、(に)全体への拡張に困難を伴っていた。そのため2022年度から研究集会を主催するなど本研究に寄与する方策を検討し、その策について研究が必要になった。すなわち、(に)の困難さを突破するために考えていた具体策「直接的に導来圏の対象を特徴付けを行うことと,導来圏の分解の道具である recollement を用いること」に加えて、新たに(へ)「区間表現の性質を明らかにすること」が必要となった。これに対して今年度は研究を進め、論文を2編出版し、数値的かつ表現論的に区間表現を捉えることができたが、(に)の困難さを突破するに至らなかった。したがって総体として遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画の2年目以降は(a)2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し、ノイズに対して安定であることを明らかにすること、(b)既存研究との比較により、それらを包括した研究となっていることを明らかにすることを順次行う計画であった。研究集会で得た知見や(へ)「区間表現の性質を明らかにすること」の研究をさらに押し進めることで、(a)での遅れを取り戻し、(b)へ進める。 すなわち、(へ)に関して、区間表現を数値的かつ表現論的に捉えるだけでは足りなかったため、さらに圏論的に捉える方向での研究を進める。そして、その結果を用いて(に)「2パラメータパーシステントホモロジーの導来同値な対象について代数的安定性定理が導来圏へ拡張できることを明らかにすること」を一部ではなく全体まで広げることについてその困難を突破し、既存研究との比較を行う。なお、文献にあたるだけでなく、今年度も引き続き研究集会を開催するなどして、他研究者との交流を行っていく。
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