研究課題/領域番号 |
20K03766
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 健自 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80303882)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | テンソルネットワーク / エンタングルメント / ネットワーク構造最適化 / ボルンマシン / パラメータ圧縮 / 動的臨界現象 / 実空間繰り込み群 / エンタングルメント容量 / 量子回路学習 / 有限サイズスケーリング / 多様体最適化 / 有向浸透現象 / テンソル繰り込み群 / エンタングルメント最適化 / エンタングルメント繰り込み群 / エンタングメント |
研究開始時の研究の概要 |
絶対零度での物質の状態、揺らぎながら発展するシステムの長時間後の振る舞い、また、複雑なデータを生成する仕組みの研究など、多様な複雑な問題(多体問題)への統一的アプローチとして、近年、量子情報の研究から派生したテンソルネットワークを用いた表現とその計算手法が注目されている。本研究計画の目的は、既存のテンソルネットワークを用いた計算手法の弱点であったより、高い結合度を持つテンソルネットワーク表現に対し、複雑な関係性(エンタングルメント)を適切に定量化し最適化を行うことで、統一的で高精度な計算手法を提供することである。
|
研究実績の概要 |
本年度はテンソルネットワーク形式のネットワーク構造の最適化という観点から主に以下の2つの研究に取り組んだ。(1)テンソルネットワークを用いた生成モデルのネットワーク構造の最適化。生成モデルは機械学習の主要な技術の一つであり、多くの分野で活用されている。生成モデルの最もシンプルなタスクはデータ分布をパラメトライズした確率的モデルで近似することである。さまざまな手法でパラメータ化することが提案されているが、特に、我々は量子力学における観測結果の確率的な解釈をベースにした生成モデルに着目した。この手法はボルンマシンと呼ばれ、波動関数の絶対値の二乗を確率として、データ分布をモデル化する。波動関数を表すのに、行列積状態やバランスツリーなど、ツリー型のテンソルネットワークの適用が試みられ、ネットワーク構造がその性能に大きく影響することが確認されている。我々は、ツリー型のテンソルネットワーク構造を与えられたデータ分布を用いて最適化することを試みた。まず、ローカルなネットワーク構造の組み替えを繰り返すことで、基底状態計算の場合には、有効なエンタングルメント構造を反映したネットワーク構造が大域的に得られることがわかった。同様にデータ分布に対しては、組み替えを行う指標の工夫をすることにより、同じく良い性能を示すボルンマシンが得られることがわかった。(2)ニューラルネットワークのテンソル分解を用いたパラメータ圧縮の最適化。我々は機械学習の代表的なモデルであるニューラルネットワーク中のパラメータをテンソル分解を用いて圧縮するという提案に着目した。圧縮の度合いをエンタングルメントエントロピーで評価し、サンプルデータに応じて、テンソルネットワーク中のボンド自由度を変更する手法を提案し、実データや人工データに対して、この手法が機能することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワーク構造の最適化を行うことで、新しい手法を2つの異なるテーマに対して提案でき、概ね順調に研究は進んでいる。しかし、コロナ禍の影響で、研究のための情報収集や研究交流は影響を受けた。
|
今後の研究の推進方策 |
生成モデルを表すテンソルネットワーク構造の最適化は性能の改善を実現したが、得られるネットワーク構造の解析が不十分である。ネットワーク構造の特性を研究することは、有用な初期ネットワーク構造の提案につながる。そのため、ネットワーク構造を特徴づける指標の研究を行う。ニューラルネットワークのパラメータ圧縮についての研究では、人工データセットの複雑さとテンソルネットワーク形式による圧縮度の関係を探り始めており、それを拡充することで系統的な調査研究を行なっていく。
|