研究課題/領域番号 |
20K03769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中村 正明 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (50339107)
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研究分担者 |
松枝 宏明 東北大学, 工学研究科, 教授 (20396518)
古谷 峻介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90781998)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 偏極 / 非エルミート系 / バルク・境界対応 / トポロジカル数 / 非エルミート表皮効果 / らせん型境界条件 / 密度行列繰り込み群 / 量子スピン系 / トポロジカル絶縁体 / 偏極演算子 / 表皮効果 / ベリー位相 / トポロジカル超伝導体 / Lieb-Schultz-Mattis定理 / ハバード模型 / トポロジカル物質 / 多変数変分モンテカ ルロ法 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカルな物理現象に関する研究は理論、実験の双方で盛んに行われており、新たな展開が起きている。Lieb-Schultz-Mattis(LSM)の定理は1次元量子系の低エネルギー励起の有無を判定するための古くから知られた理論であるが、これは系のトポロジーを特定する偏極演算子をはじめとする他の理論体系と有機的なつながりを持っている。そこで、本研究では、LSM定理と偏極演算子を高次元系や非エルミート系など新奇なトポロジカル状態を特徴づける新たな枠組みへの応用を試み、さらに、 情報論理論と幾何学に関するアプローチを組み合わせることで、トポロジカルな物理現象の探究を多角的・包括的に進めていく。
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研究実績の概要 |
近年、非エルミート量子系はトポロジーの観点から盛んに研究がなされている。非エルミート系では、系の端に状態が局在する、いわゆる表皮効果が現れ、これが一種のトポロジカルな状態と考えられている。しかし、エルミート系と異なり、バルク・境界対応が破綻しているため、通常の周期境界条件での計算では、開いた境界条件下で起こる非エルミート表皮効果を記述することはできない。その問題を解決する手法の一つが非 Blochバンド理論であり、Bloch状態における波数ベクトルを複素数に拡張することで、バルク・境界対応を回復させ、表皮効果の状態に対応するトポロジカル数を計算することが可能となる。一方、エルミート系において、電子系の絶縁状態を特徴づけるトポロジカルな指標として、偏極演算子の基底状態での期待値が知られている。また、これを双直交基底での期待値とすることで周期境界条件下での非エルミート系へ拡張も行われている。我々は、偏極に非Blochバンド理論を適用することで、非エルミート表皮効果を特徴づける指標となることを議論し、この手法を非エルミート Su-Schrieffer-Heeger模型に適用し、非エルミート表皮効果が特徴づけられることを示した。また、らせん型境界条件により2次元系へ拡張された偏極を用いることで、2次元非エルミートWilson-Dirac模型にも適用し、ここでも1次元系と同様に解析が可能となることを示した。また、その他にも、らせん型境界条件を密度行列繰り込み群の手法と組み合わせることで、Hubbard模型、Heisenberg模型、Kitaev-Heisenberg模型など2次元電子系や量子スピン系の解析が効率的にできるようになることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
らせん型境界条件と偏極演算子を用いた、開いた境界条件における非エルミート表皮効果に関する研究は順調に進展し、JPSJ誌に出版することができた。さらにらせん型境界条件を密度行列繰り込み群に応用する研究についてはPhysical Review B誌とJPSJ誌に3本の論文を出版することができた。さらにらせん型境界条件を用いてトポロジカル数を計算する手法に関する研究や、トポロジカル超伝導体への偏極の応用に関する研究も進展しており、こちらも投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では1次元量子系に適用されてきた、LSM定理、偏極演算子、ベリー位相、レベルスペクトロスコピーといった概念をそれらの間に相互に成り立つ関係を踏まえることで、非エルミート系や高次元などの諸問題に包括的に拡張を試みることを目的としている。らせん型境界条件を用いた2次元Wilson-Dirac模型における偏極演算子の解析が成功したため、この手法をChern数の計算に応用し、相互作用のある場合のChern数の計算法に一般化することで、密度行列繰り込み群の計算手法と組み合わせて、強相関系のトポロジカル相の解析に応用したいと考えている。また、エンタングルメントスペクトルの計算も行う予定である。さらにトポロジカル超伝導体への偏極演算子の応用に関しても研究を進めている。
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