研究課題/領域番号 |
20K03770
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安田 千寿 琉球大学, 理学部, 教授 (20398564)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 固体ヘリウム / 多スピンリング交換模型 / ハニカム格子 / フラストレーション / 古典的基底状態 / カイラリティ / 量子スピン系 / 固体ヘリウム薄膜 / 多スピン交換模型 / 量子スピン液体 |
研究開始時の研究の概要 |
グラファイトなどにヘリウム原子を吸着させて作られる固体ヘリウム薄膜では、固体なのに液体的な振る舞いを示す量子スピン液体などの新奇な状態が極低温において観測され、その状態が生じるメカニズムの理解が固体物理の新たな枠組みや考え方に導くと期待されている。本研究では、新奇な状態やその出現機構を明らかにするため、固体ヘリウム薄膜の性質を記述しているハニカム格子多スピンリング交換模型の古典的基底状態と熱力学特性、量子力学的効果などを数値的手法や解析的手法を用いて調べる。
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研究実績の概要 |
極低温で量子スピン液体状態が実現する固体ヘリウム3薄膜を記述する有効な模型と考えられるハニカム格子多スピンリング交換模型は、最近接交換相互作用と六体のリング交換相互作用からなる。昨年度までは、反強磁性的な最近接交換相互作用と強磁性的な最近接交換相互作用の両方の領域の古典的基底状態の探索を行った。最近接交換、六体交換、そして、外部磁場の大きさに依存して、反強磁性状態、八副格子構造、5u1d状態、強磁性状態、平面内で渦を形成する状態など多様な状態が実現している。実現する様々な古典的基底状態を明らかにしておくことは、スピン波理論等を用いて量子力学的効果を調べる上でも重要である。
今年度は、有限温度の熱力学的性質に注目した。これまでも古典モンテカルロ法を用いて熱力学的性質を調べてきたが、多スピンリング交換模型では、複雑な状態が実現し、有効なモンテカルロ計算を実行するための状態更新方法が従来のものでは不十分であると推察され、有効な状態更新方法の確立が課題となっている。今年度は、数値的手法に加えて、分子場理論とグリーン関数の方法を用いた解析的手法による研究を進めた。分子場近似の範囲内では、転移温度や磁化と帯磁率の温度依存性を調べ、強磁性相関や反強磁性相関が六体交換により抑制されることを示唆する結果を得た。また、分子場近似よりもスピン間の相関を取り入れたグリーン関数の方法では、分子場理論の結果を発展させ、温度揺らぎにより有限温度の秩序化を抑制させる定式化を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では、ハニカム格子多スピンリング交換模型の古典的基底状態と熱力学的特性を調べることを計画した。古典的基底状態はすでに広い相互作用の範囲で調べることができている。一方、熱力学的特性については、古典モンテカルロ法における有効な状態更新方法の確立が課題として残っている。今年度からは、分子場理論やグリーン関数の方法の解析的手法による研究に切り替え、研究を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
古典的基底状態に関しては、系をより現実的なものにする。つまり、二体交換相互作用として、最近接相互作用のみを考慮してきたが、次近接相互作用や次々近接相互作用の効果も調べる。また、熱力学的特性を調べるために、グリーン関数の手法による研究を進める。
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