研究課題/領域番号 |
20K03788
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京大学 (2022) 広島大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
井村 健一郎 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (90391870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 非エルミート量子系 / 羽田野-ネルソン模型 / 量子もつれのダイナミクス / エンタングルメント・エントロピー / 共形場理論 / 非エルミート系 / バルクエッジ対応 / 多体局在 / 量子エンタングルメント / トポロジカル絶縁体 / トポロジカル |
研究開始時の研究の概要 |
最近、再注目されている非エルミート系の量子力学に、トポロジカルという要素を加味し、特にバルク・エッジ対応という観点から、この系に特有の新しい物理を模索する。非エルミートな量子力学系は境界条件にとても敏感であるため、エルミート系とは違う境界条件の取り扱いが求められる。エネルギーバンドやトポロジカル絶縁体といったエルミート系の諸概念が、非エルミート量子力学にどのように一般化されるか、精査することを通して、エルミート系にはなかった非エルミート系特有の新しい物理を模索する。
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研究実績の概要 |
非エルミート量子系における波束と量子もつれのダイナミクスを調べた。(自由粒子の)エルミート量子力学では、空間的に局在した波束は時間と共に拡がり、量子干渉効果により、量子系特有の拡散を示す。一方、典型的な非エルミート系である羽田野-ネルソン模型(非対称ホッピング型非エルミート系)では、波束を時間発展させても、このような「量子的拡散」は起こらず、ホッピングの非対称性を反映してほぼ形を変えないまま波束の中心が一方向にシフトする。厳密に言えば、波束は長い時間スケールで緩やかに拡散するが、この拡散はガウス的な古典的である。ランダムな不純物ポテンシャルを印加すると、エルミート系における量子的な拡散に似た振る舞いが復活し、その増加と共に波束は拡がるようになるが、これはエルミート系において波束が単調に局在傾向に向かうのとほぼ真逆の傾向と言える。多体効果を取り入れた量子もつれのダイナミクスでも、このような非エルミート系特有の波束のダイナミクスの影響が見てとれる。一方、量子もつれのダイナミクスでは、非エルミート系のスペクトルが複素である(周期境界条件を仮定)ことに起因して、多くの固有状態の重ね合わせで作られた初期波束が時間発展と共に最大の虚部を持つ1つの固有状態に収斂されていく効果が重要になる(*1)。本研究では、非エルミート系における量子もつれのダイナミクスにおいて、波束の拡がる効果と重ね合わせの抑制効果が競合し、エンタングルメント・エントロピーが時間的に非単調なふるまいをすることを明らかにした。 *1)このように長時間経過して系がある種の平衡に近づく漸近的な時間領域では、エンタングルメント・エントロピーが、フェルミ縮退した基底状態からのボゾン的な粒子-正孔励起の場合(*2)と同じ対数的なサイズ依存性を示すことを見い出した。 *2)c=1共形場理論で記述される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカル絶縁体の非エルミート版をきちんと定式化するという元々の計画から派生して、羽田野-ネルソン型の非エルミート系で局在-非局在転移をトポロジカルな相転移として記述する構想(*1)、そこからさらに発展して今回の量子もつれのダイナミクスの研究へと繋がった。そのような意味で、研究内容は当初の計画と少し逸れたが、発展的な方向に展開していると考えている。 *1)これには非エルミート系特有の点ギャップという複素スペクトルの構造(*2)が関連している。今回の量子もつれのダイナミクスの研究でもこの非エルミート系特有の複素スペクトルの構造が鍵を握っていた。 *2)羽田野-ネルソン模型は点ギャップ型非エルミート系のプロトタイプである。
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今後の研究の推進方策 |
量子もつれのダイナミクスの研究では、長時間経過した後の漸近的時間領域でエンタングルメント・エントロピーが、c=1共形場理論の予測と一致する対数的なサイズ依存性を示すことを見た(相互作用のない場合)。相互作用のある系の場合、対数的なサイズ依存性は変わらず、その係数を決める中心電荷cが実効的に繰り込まれるような振る舞いも見られた。今後はより広いパラメーター領域で、このような漸近的時間領域におけるエンタングルメント・エントロピーのサイズ依存性を調べ、早急に論文にまとめたい。
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