研究実績の概要 |
非エルミート量子力学系では固有状態の性質が通常のエルミート系の場合と大きく異なることが盛んに議論されているが、波束のダイナミクスもまたエルミート系と場合と定性的に異なる。羽田野-ネルソン模型[1]のような非対称ホッピングの非エルミート系では清浄極限では量子干渉が抑えられて古典的な拡散現象が見られ、不純物強度の増加と共に量子干渉が回復する。私たちは最近の研究[2-3]([3]は本年度業績)で、多体効果も取り入れて、量子もつれのダイナミクスを調べました。量子もつれの定量的な扱いには、量子もつれ/エンタングルメント・エントロピーEEを使うが、これは量子情報分野では標準的な概念。論文[2,3]では、多体効果も取り入れて、量子もつれのダイナミクスを調べ、非エルミート性による波動関数の収縮(重ね合わせの消失)により、EEが時間的に非単調なふるまいをすることを議論した。特に、長時間領域におけるEEの漸近的な振る舞いは興味深く、(エルミートな系の)共形場理論[4]で知られているのと同じ特徴的な対数的サイズ依存性を示すことを論文[3]で明らかにした。昨年12月に出版された折戸隆寛氏(東京大学物性研究所)との共著論文[3]は、#PRBTopDownloadに選ばれた。 [1] N. Hatano, D.R. Nelson, Phys. Rev. Lett., 77, 570 (1996). [2] Takahiro Orito, Ken-Ichiro Imura, Phys. Rev. B 105, 024303 (2022). [3] Takahiro Orito, Ken-Ichiro Imura, Phys. Rev. B 108, 214308 (2023). [4] P. Calabrese and J. Cardy, J. Stat. Mech. 2004, P06002 (2004).
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