研究課題/領域番号 |
20K03798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴浦 秀勝 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10282683)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 太陽電池ペロブスカイト / 励起子 / 発光スペクトル / 遮蔽効果 / 電子・格子相互作用 / 非線形光学 / 2光子吸収 / 励起子効果 / 動的遮蔽 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽電池材料は電荷的に中性な半導体状態から光を吸収しエネルギーを得て正電荷と負電荷が生成され,その電荷を反対方向に取り出すことにより電力を得ている.正電荷と負電荷の間にはクーロン相互作用による引力が作用し,励起子と呼ばれる束縛状態を形成する.日本発のポストシリコン太陽電池材料である太陽電池ペロブスカイトでは光吸収端近傍において励起子が支配的な役割を担うことが知られており,励起子が安定であれば電力を取り出す際に不利に働くと予想されるにもかかわらず,高効率動作が実現されている.本研究では太陽電池ペロブスカイトの光学応答における励起子効果を理論的に解明する.
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研究実績の概要 |
今年度は太陽電池ペロブスカイト材料における励起子発光寿命に対するラシュバ型スピン・軌道相互作用の効果と量子ドットにおける励起子複合体についての理論的研究を実施した. 前者は,ある種の組成の物質に対する励起子発光の実験的測定において非常に長い発光寿命を持つという報告があり,その原因がスピン・軌道相互作用にあるという予測の理論的検証を行ったことになる.スピン・軌道相互作用が生じると,エネルギーバンドがスピン分裂して,伝導帯と価電子帯でその分裂の大きさが異なれば,間接遷移型半導体となる.励起状態から非輻射緩和した後に発光は生じるので,光子の波数が無視できる長波長近似の範囲内では,間接遷移型半導体の最低エネルギー状態では発光は生じず,非常に長い寿命を持つことになると期待される. ただし,現実の応用で重要なのは室温での振る舞いであり,理論解析の結果によれば桁違いに寿命が変化する特異な機構は見いだせなかった.もちろん,スピン分裂を任意の大きさに制御可能であるならばその限りではない. 厳密には,電子と正孔に作用するクーロン引力により励起子束縛状態が形成され,その重心運動量がゼロでない状態に緩和することによる長寿命化の可能性がある. しかし, 励起子効果を取り入れた計算を実行した結果は,クーロン相互作用を考慮しない場合と大きな違いは見られなかった. 後者の,量子ドットにおける励起子複合体の計算結果は,発光スペクトルにおける励起子分子と荷電励起子による寄与と同定されるサイドバンドの実験結果と比較できる. 理論解析から, スペクトルサイドバンドのサイズ依存性に対して量子ドット外部の誘電環境の効果が重要な役割を果たすことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初に掲げた研究目的のひとつであったラシュバスピン・軌道相互作用による発光寿命変化の理論的評価を実行できた. そもそも,空間反転対称性のある物質でスピン・軌道相互作用の起源をどこに求めるかが問題であったが,その起源に関わらず,特異的に発光寿命が伸びる機構は見いだせなかった.
また,新たに実験的に観測された,量子ドットにおける発光サイドバンドから見積もられる励起子分子と荷電励起子のエネルギーの解析により誘電環境の効果が重要であることを明らかにし,励起子複合体の定量的な評価が可能になると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
当初に掲げた主要な目標が達成されており, あとは,量子ドット発光スペクトルのサイドバンドに対する誘電環境の影響等を理論的に解明する.
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