研究課題/領域番号 |
20K03802
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 弘泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40596607)
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研究分担者 |
高橋 英史 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50748473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 熱電効果 / フォノン / フォノンドラック / 極性ー非極性構造相転移 / 極性 / マグノンドラッグ / 極性フォノン / 極性金属 / MoTe2 / フォノンドラッグ / 熱磁気効果 |
研究開始時の研究の概要 |
熱電・熱磁気効果の理論的解析には、現象論的なボルツマン輸送方程式を用いるのが一般的である。しかし、近年、ボルツマン方程式では議論しきれない領域『beyond Boltzmann』に新しい熱電特性が期待されている。そこで、本研究では、近藤絶縁体FeSb2やディラック・ワイル物質、極性―非極性構造相転移を示すMoTe2でみられるフォノンの熱流に起因した熱電・熱磁気効果に着目し、そこでのbeyond Boltzmannを明らかする。
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研究実績の概要 |
本課題の目的は、「フォノンの熱流に起因した熱電・熱磁気効果に着目し、そこでのBeyond Boltzmannを明らかする」ことである。特に、フォノンの熱流に由来した熱電効果の一つであるフォノンドラック効果での熱電効果・熱磁気効果の解明を行うことを目的としている。 22年度、代表者(松浦)は、実施計画の一つである「フォノンドラックに由来する熱磁気効果の微視的理論構築」を行った。微視的方法論構築・具体的な物質への適用を行い、実験結果を微視的模型から説明することができた。また、代表者は、微視的理論構築とは相補的に、機械学習を用いた熱電解析の手法開発も行った。熱電効果における基本的な関係式(Sommerfeld-Bethe関係式)の逆問題を機械学習の手法により解くことで、電気伝導度とゼーベック係数の実験データから伝導度スペクトルや化学ポテンシャルを推定する手法を開発した。さらに、本課題で蓄積した方法論を応用することで、クオーツにおけるフォノンの角運動量の推定、フォノンドラックと類似現象であるマグノンドラックの研究、ディラック系での熱電効果の解析、半金属での非弾性散乱に由来したウイーデマン・フランツ則の破れについても明らかにした。 分担者(高橋)は、極性-非極性構造相転移の不安定性を持つ新物質を合成し、構造相転移の不安定性に起因したフォノンと伝導電子の結合による熱電現象や新機能の開拓を目指す研究を行っている。その結果、極性構造-非極性構造の構造不安定性を持つ3元系化合物の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた「フォノンドラックに由来する熱磁気効果の微視的理論構築」に関して、最近、フォノンドラック由来の熱磁気効果と期待される実験結果が報告された。そこで、実験で報告された系へ微視的方法論を適用することにより、研究を加速的に進展させることができた。また、非従来型の方法論である機械学習の方法を用いた熱電解析手法も開発することができ、熱電解析に新たな手法を提案することができた。さらに、本課題で蓄積した方法論をもちいて、マグノンドラッグ、フォノンの角運動量、半金属での非弾性効果、ディラック電子系での熱電効果等の解析をすることができ、広い分野への波及効果を示すことができた。 分担者(高橋)は、極性-非極性の構造不安定性を持つ新材料(3元系化合物)の単結晶合成に成功した。この物質の第一原理計算により、バンド反転を持つトポロジカルなバンド半金属であることが示唆された。また、電気抵抗や磁化の測定から超伝導転移を示すことを明らかにした。そのほかにも遷移金属カルコゲナイド化合物においてトポロジカルなバンド構造を持つ場合に動的ピエゾ効果の観測に初めて成功している。以上のように極性構造相転移を持つ結晶の超伝導や新現象を発見した。これらの現象はいずれも、電子状態と構造不安定性(構造ゆらぎ)の相関に起因することが期待されており重要な成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
フォノンドラックに由来する熱磁気効果の微視的理論構築では、研究成果の論文執筆を進めている。この研究をさらに発展させ、フォノンドラッグ由来の新現象への展開、Beyond Boltzmannの解明につなげる。並行して、非従来型の方法である機械学習を用いた熱電解析手法をさらに発展させ、未実験の物質での熱電効果を予言できる方法論へと展開することを目指す。また、本計画で蓄積した方法論を用いて、マグノンドラッグに由来した新奇熱電現象への応用が可能であり、相補的にその研究を進める。 分担者は新しい構造不安定性に起因した新現象や熱電現象の開拓を目指す。代表者は分担者と協力し理論的な側面から構造不安定性に由来した研究を行う予定である。 また、コロナウイルスの影響で20~22年度は海外での国際会議での研究成果の発表を行うことができなかった。今年度は海外の国際会議等での発表をコロナウイルスの状況を見極めながら積極的に行う予定である。
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