研究課題/領域番号 |
20K03823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
末元 徹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 客員研究員 (50134052)
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研究分担者 |
杉田 篤史 静岡大学, 工学部, 教授 (20334956)
小野 頌太 岐阜大学, 工学部, 助教 (40646907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | フェムト秒発光 / 赤外発光 / アップコンバージョン / 金属 / 非平衡電子系 / プラズモン / 発光 / 超高速 / ナノ構造 |
研究開始時の研究の概要 |
発光現象は、これまで、半導体や絶縁体において詳しく調べられ、照明や表示装置などへの利用もされてきましたが、金属では約半世紀前に微弱な発光が発見されて以来、あまり研究が進んでいませんでした。本研究では、短パルスレーザーを金属に照射したときに現れる高強度短寿命の発光から、電子の緩和現象を調べる手法を実験理論両面から研究し、「超高速発光による金属物性の研究」という新分野を切り開きます。
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研究実績の概要 |
1.ナノ構造体の発光: 金ナノ構造体における励起光と発光の偏光相関を詳しく調べるために、等方的なナノ構造(円形及び正方形、サイズ260~340 nm)を作製し、偏光特性を測定した。その結果、円形試料については励起光の偏光と同じ偏光の発光が強く出る偏光メモリー効果があること、発光の振動数がプラズモン共鳴に近いときほどそのメモリー効果が大きいことがわかった。さらに、正方形試料では偏光が辺に平行な場合と、対角線方向に平行な場合で、メモリー効果が逆になることが分かった。 2.マグネシウムにおけるバンド間遷移発光: 表面粗さの異なる2つのMg試料について、バンド内遷移とバンド間遷移の強度を比較したところ、その比率は、表面粗さに依存しないことが分かった。これは、バンド内遷移が必ずしも表面凹凸に起因する波数保存則の破れを必要としないことを意味し、これまでの定説と整合しない。新しい発光モデルについて現在検討中である。 3.銅ニッケル合金における発光: これまでの研究で、銅の発光は寿命が長く強度が大きいこと、ニッケルでは逆に寿命が短く、強度が小さいことが分かっているので、これらの合金での振舞いに興味を持ち、組成の異なる試料について、発光特性を調べた。その結果、ニッケルの比率が20~30%程度のところで、急激に寿命が短くなり、強度が下がることが分かった。規則合金に対するバンド計算との比較により、フェルミ面直下でのNiのd電子の状態密度の成長が、発光特性に影響していることが示唆された。 4.発光特性と電子比熱の相関: 15種類の単体金属元素について、その発光強度と寿命を測定し、比較したところ、両者に非常によい相関関係があることが分かった。また、発光寿命と文献にある低温電子比熱の相関を調べたところ、比熱が大きいほど寿命が短いという相関関係があることが分かったが、少数の例外(軽金属)があることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、COVID19の影響で停滞していた共同研究者との交流、学会での討論などがほぼ正常なレベルで行われるようになり、大学院生の研究への参加も可能になったので、研究の効率が上がった。装置は故障などのトラブルもなく安定的に稼働した。以上により、研究は大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
この基盤研究C課題は本来2022年度で終了の予定であったが、種々の理由により進捗が遅れていたこと、予算的には、研究開始以来COVID19のために旅費がほとんど必要なかったので、余裕があったことを考慮し、1年間の期間延長を申請して認められた。2023年度は補足実験を行うとともに、研究の成果をまとめて論文化することを目標とする。 1.これまでに人工ナノ構造を用いた研究を推進し、発光スペクトルの形状や時間変化については十分な情報を収集したが、偏光相関については、モデルを確立するに至っていないので、偏光メモリーの起源の解明に注力する(主に杉田が担当)。昨年度、グレーティング構造を持った試料について指向性のある発光を発見したが、再現性の担保および試料の最適化にまだ成功していないので、試料の設計を含めてできるだけ前進を試みる(電通大菅教授との共同研究)。 2.Mgにおける発光: 実験パートについては投稿論文を執筆中である。新しい発光モデルについて理論の構築を試みているところである(小野が担当)。 3.銅ニッケル合金にける発光: 任意の組成の合金を再現性良く作製できる状態にはないので、早急に手法の確立を図り、発光特性の組成依存性のデータを揃える。理論との整合性は一部確認できているので、年度内に論文投稿に進む予定である(主に大学院生が担当)。 4.金属における発光特性の包括的な理解: 本研究課題の目標は、「超高速発光分光法による金属研究の開拓(課題名)」である。すでに15種類の単体金属について、発光特性のデータを集め、発光寿命、発光強度、電子比熱との相関を示しているが、より定量的な理解を進めるために、発光モデルの再検討と、バンド計算に基づく状態密度、遷移確率の評価を進める計画である(末元と小野が担当)。これが本研究を総括する成果になるものと考えている。
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