研究課題
基盤研究(C)
5d電子を有する二つのレニウム酸化物、スピン軌道強結合金属Cd2Re2O7および有効スピンjeff=3/2を持つモット絶縁体Ba2MgReO6の単結晶試料に対して酸素サイトのNMR測定を行い、スピンと軌道が絡んだ秩序状態の実空間における微視的な構造を明らかにする。酸素2p軌道はレニウム5d軌道と強く混成するため、酸素サイトの核磁気共鳴スペクトルは5d電子系の対称性の変化を極めて敏感に反映する。このことを利用して、Cd2Re2O7においては反転対称を破るレニウムと酸素のボンドの秩序化、Ba2MgReO6においては5d電子の磁気モーメントに加えて磁気八極子の空間分布を明らかにする。
スピン軌道相互作用の強い5d電子系が生み出す新規な秩序状態を探索するために、スピン軌道結合金属Cd2Re2O7およびダブル・ペロブスカイト型モット絶縁体Ba2MgReO6の単結晶試料に対して核磁気共鳴実験(NMR)を行った。前者については111Cd原子核のナイトシフトの測定結果から、シフトテンソルが属する点群対称性の既約表現を決定するという新しい解析手法によって、空間反転対称性を破る相転移で実現する秩序パラメータがEu対称性を持っていることが示された。後者については酸素サイトの内部磁場異方性の測定から、傾角反強磁性秩序相における磁気双極子および磁気八極子の全成分を定量的に評価した。
本研究は強相関電子系の多彩な秩序状態、特に磁気双極子にとどまらない高次多極子のいわゆる隠れた秩序状態の検出に、NMRが有効であることを示した。その中で、ナイトシフトなどNMR応答を支配するテンソル量を、サイトの点群対称性の既約表現の基底によって分類するという新しい解析方法を提示した。また磁気八極子など高次多極子を定量的に評価する方法を提示した。
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