研究課題/領域番号 |
20K03830
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山内 徹 東京大学, 物性研究所, 技術専門員 (10422445)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 3d1電子正方格子Mott絶縁体 / 八重極子秩序 / 圧力誘起異常金属相 / 強相関スピン軌道結合物質 / Sr2VO4 / 高静水圧力下磁場中電気測定 |
研究開始時の研究の概要 |
Sr2VO4の圧力下電子物性は,過去に例のないほど複雑である.この複雑な物性が,スピン軌道相互作用を組み込んだ強相関物質の相図(Krempa相図と呼ぶ)を用いて説明可能かを検証することが,本課題の核心である.この場合,高圧低温下の異常金属相がトポロジカル絶縁体状態の特徴を持つはずである.厳密には磁場中抵抗測定ではトポロジカル絶縁体か否かを確定できない.しかし,確定的な主張は出来ずともKrempa相図とこの圧力下電子物性との間の関連性が積み上がってゆく.以上は,片々たるバナジウム酸化物の電子物性を議論しているに様にみえるが,実は強相関電子系のトポロジカルな性質の解明という大きな枠組みで捉えうる.
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研究実績の概要 |
K2NiF4構造をとる Mott絶縁体alpha-Sr2VO4で,本課題研究代表者が近年発見した約7 GPa以上の静水圧力下で出現する異常金属相の電子状態を解明することを目的にする.このため,約7T,12GPa程度までの圧力下磁場中電気測定を中心に行うことを予定している.alpha-Sr2VO4には,3d遷移金属酸化物であるにも関わらず,スピン軌道相互作用λが無視できないとの理論サイドからの主張がある.この系の基底状態は,大きなλが期待できるIr酸化物や重い電子系で出現する,八重極子秩序であるとの主張である.この主張が正しい場合alpha-Sr2VO4は,Mott絶縁体相が実現するほどの電子相関,即ち3d遷移金属酸化物特有の大きなU/t(U:onsite Coulomb 相互作用, t:band幅)をもち,尚且つ基底状態を支配するほどのλをもつ,従来にないclassに分類される稀有な物質と考えられる.この背景のため,圧力によるMott転移の高圧側でこの系に現れる,室温から低温に向けて金属-絶縁体-金属という複雑な転移を経て,基底状態に現れる特異な金属相は大変興味深い.
本申請課題では上記の目的遂行のために,我々が2007年から2012年にかけて建設した圧力下磁場中物性測定装置を使用する.この装置は科研費基盤研究(S)No.18104008(代表 研究者:上田寛)のなかのひとつのプロジェクトとして建設したもので,プロジェクト終了後2017年まで稼働していたが,その後使用が途絶えているため,特に当初マグネット電源の不調が問題であった.具体的には,出力磁場に数百Oeの任意のオフセットが加わる事であった.その問題も,圧力セル内に標準試料となる鉛の小さな粒を同時封入するなど,測定方法などの工夫によりある程度許容可能な不具合となったので.現行のまま運用する判断を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定からは,遅れていると判断している.個人的な事情ではあるが,2021年5月2日の遠隔地在住の実母の急逝に続き,2022年7月11日に実父の死去があり,相続やその他法的手続きの様々な雑務に時間を取られ,本課題へのエフォートを多くは割けなかったことが挙げられる.圧力誘起するalpha-Sr2VO4の異常金属相を観測するためには,化学量論的に不定比を高度にコントロールした単結晶試料が必要であるが,2020年2月以降のcovid19パンデミックの影響や共同研究者の研究環境変化などで,その供給がかなり立ち遅れていることもある.以上3つの理由から,予定からの遅れは否めない状況である.
試料供給に関しては共同研究者に頼らざるを得ず,先方もあと半年程度と仰って頂いているので,供給を待ちたいと考えている.装置の状況は,上述したようにマグネット電源の問題で完全とは言い難いが,磁場の値に或るオフセット値が乗る現状でも,一応の測定は可能であろうと思われる.その状況下で,前年の「今後の研究の推進方策」で述べた,beta-Na0.33V2O5の圧力勇気超伝導相の下部臨界磁場の異方性を測定する実験を行なっていた.その最中にPC制御して居る主ヒータが装置との通信エラーによって暴走し,装置の圧力発生に関わる主要構造,付属の温度センサや配線にも致命的な熱的ダメージがあり,現在その復旧に取り組んで居る最中である.
以下は復旧見通しになるが,ガラス繊維強化プラスチックで作成されている主要構造材に関しては,ある程度予備的に作成しており,それを援用することができる.配線やセンサなども,比較的低価格なものを利用して居るので,復旧に何してはあまりコストをかけずに行えると考えて居る.
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今後の研究の推進方策 |
先ずは,装置の正常稼働への復旧を最優先に行う.これは単純に当該装置を立ち上げた際に行った作業を繰り返すこととなる.
alpha-Sr2VO4試料結晶の供給があれば,帯磁率や電気抵抗率などの常圧下での物性測定による試料評価を経て,本測定である高圧力強磁場複合極限状態下での電気抵抗率測定を行うことができる.本研究課題上の最も大きなリスクは,試料結晶の供給の遅れである.このリスクをヘッジする意味で,私自身が合成および結晶成長,不定比性制御まで行ったbeta-Na0.33V2O5をもう1つのターゲットに設定した.高品位alpha-Sr2VO4結晶の供給を待つ間,この物質で高圧力強磁場発生装置を用いて下部臨界磁場測定を行う.
この物質は科研費基盤研究(S)No.18104008(代表 研究者:上田寛)のテーマの1つとなった圧力誘起超伝導体である.勿論,これら上部下部臨界磁場は超伝導転移温度と同様に圧力依存する.この転移温度を下部臨界磁場から求まる侵入長に対してplotすると,その超伝導相のgap対称性がBCS的であるとの議論ができるので,その旨論文を作成し投稿した.しかしレフリーからは「7 GPa程度の圧力下で行った交流帯磁率測定法で下部臨界磁場が求まるとは思えず,おそらくpinningを見ている可能性がある」との,もっともな指摘があった.そこで論文は一旦取り下げ,さらなる追加実験を行う機会を待っていた.この交流帯磁率を各結晶軸方向に測定し,下部臨界磁場の結晶方向依存性(異方性)を求める.この異方性を抵抗測定から求まる上部臨界磁場の異方性と比較すれば,件の下部臨界磁場がpinningなどの外因性のものに由来するわけではなく,超伝導相の性質そのものに由来するかどうかを判断できるのである.つまり上部下部臨界磁場の異方性が整合すれば,この超伝導はBCS的なものであると主張できることになる.
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