研究課題/領域番号 |
20K03860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水島 健 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (50379707)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | トポロジカル超伝導 / スピン輸送 / 異方的超伝導 / 交差応答 / 集団励起 / スピンネルンスト効果 / スピンゼーベック効果 / 準古典理論 / 熱ホール効果 |
研究開始時の研究の概要 |
Berry位相に代表される量子状態空間の幾何学的構造は現代の物理学において最も重要な概念の一つである。本研究課題では、トポロジカル超伝導とスピントロニクスの知見を融合することで、量子幾何構造が織りな す豊かなスピン物性を抽出することを目指す。一方、超伝導輸送研究で広く用いられる強力な 理論として準古典Eilenberger理論があるが、この理論は量子幾何構造を取り込んでいないという重大な欠陥がある。そこで本研究課題では、量子幾何構造を取り込んだ準古典輸送理論の確立を目指す。この理論を基に、クーパー対のダイナミクスに由来した量子幾何構造の揺らぎが生み出す新奇な超伝導スピン物性を探求する。
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研究実績の概要 |
本年度は、主に、トポロジカル超伝導体における熱スピン交差応答について研究を進めた。特に、準古典Keldysh理論を用いて、非ユニタリー超伝導状態に温度勾配を印加すると、温度勾配に沿った方向にスピン流が流れる「スピンゼーベック効果」が生じることを見出した。バルク超伝導体では、マイスナー効果によって温度勾配に沿って生じる電流は完全に遮蔽されるため、ゼーベック効果は期待できない。これは、温度勾配によって誘起される準粒子による電荷の流れが、対向する超伝導電流によって完全に遮蔽されるためである。しかしながら、本研究では、バルクの非ユニタリー超伝導において、温度勾配は準粒子の電荷の流れだけでなく、スピンの流れも誘起すること、準粒子が媒介するスピン流はスピン偏極した超伝導スピン流によって遮蔽されないことがわかった。さらに、このスピンゼーベック効果は非ユニタリなCooper対による対称性の破れを直接的に反映させていることも明らかにした。本研究課題を通して、(1)カイラル超伝導における時間反転対称性と鏡面対称性の自発的破れによって熱ホール効果が生じること、(2)ヘリカル超伝導における鏡面対称性とスピン回転対称性を合成した対称性が自発的に破れることでスピンネルンスト効果が生じることがわかった。これら一連の研究成果によって、熱ホール効果、スピンネルンスト効果、スピンゼーベック効果などの熱・スピン輸送現象がCooper対の対称性を同定するためのプローブとして有用であることが見出された。上記に加えて、ヘリカル超伝導において、ヘリカルヘッジ状態が媒介する逆スピンホール効果や内因性スピンネルンスト効果などを見出しており、これらは現在、論文としてまとめている。
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