研究課題/領域番号 |
20K03886
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中原 明生 日本大学, 理工学部, 教授 (60297778)
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研究分担者 |
狐崎 創 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00301284)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 記憶効果 / レオロジー / 破壊の制御 / 塑性流体 / コロイド / 破壊 / ソフトマター |
研究開始時の研究の概要 |
粉と水を混ぜて作ったドロドロなペーストは自分で揺れたり流れた方向や受けた電場や磁場の方向を記憶する。ペースト自体を見ても何を記憶したのかわからないが、このペーストを乾燥させて固化した時に記憶に従って割れやすい方向が決まるので、記憶を操作することで固液混合材料の破壊や材料物性の制御に応用できる。固化したペーストを破壊して得られた亀裂パターンを解析することでこのペーストが過去にどのような体験をしたか知ることもできる。本研究ではペーストが様々な体験を記憶する能力の多様性について調べ、ペーストがどのような体験をどのような記憶方式で学習するかそのメカニズムを解明して、未来の制御と過去の探求へと応用する。
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研究実績の概要 |
粉と液体を混ぜた高濃度固液混合ペーストは自身の揺れ(振動)や流れ(剪断)などの動きを塑性変形の形で記憶し、乾燥させて固化した状態での割れやすい方向はその記憶によって決定される(ペーストの記憶効果)。これまでの本研究グループの研究により、ペーストが揺れを記憶した場合は揺れた方向に垂直に割れやすくなり、流れを記憶した場合は流れた方向に平行に割れやすくなることが分かっている。 本研究では、ペーストが揺れや流れの動きを記憶するメカニズムを解明し、工学的な応用を目指す。まず、ペーストが狭いスリットを通過して流れる時に、割れやすくなる方向がスリット通過前後で流れに平行な方向から垂直な方向へと変化するメカニズムについて調べるにあたり、記憶効果によって生成された異方的な縞状亀裂パターンの方向性を定量化するために情報エントロピーを用いた異方性の定量化を提案することで、スリット通過前後の異方性の転移が定量化できることになり、そのメカニズム解明へ向けた大きな進歩となった。 次に、ペーストが揺れや流れなどの自身の動きを記憶するメカニズムを調べるために粉と混ぜる液体の種類を水からエタノールに変えたところ、炭酸カルシウムの粉末を混ぜると揺れを記憶するがエタノールと混ぜると記憶できなくなり、一方フッ化カルシウムの粉末とエタノールを混ぜると揺れを記憶できるが水と混ぜると記憶できなくなるなど、粉と液体の組み合わせによって記憶できたりできなくなったりすることが分かった。さらに研究を進めたところ、記憶効果が発現するためには粉と液体の親和性が関係しており、親和性が良いと粉が液体中で一様に分散してしまうために異方性を記憶する構造が形成できず、かえって親和性が悪いほうが揺れや流れなどの動きに連動した異方的なネットワーク構造を形成しやすくなるために記憶効果が発現しやすくなることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ペーストの記憶の定量化やその結果出現する異方的な亀裂パターンの異方性を定量化するために情報エントロピーを用いた手法を提案できたことは大きな成果であり、その結果スリット通過前後の記憶や亀裂の異方性の転移を定量化できるようになった。また、記憶効果の発現のためには粉と液体の親和性が悪いことが異方的なネットワーク構造の形成には必要であることも見出され、記憶のメカニズム解明に近づくことができた。しかし、この1年は、研究代表者が病気治療のために長期入院して2度も手術をする事態となった。また、ハンガリーの研究者との共同研究もハンガリーの隣国ウクライナがロシアに侵略される事態となってしまい共同研究のための我々のハンガリー渡航もコロナ禍に引き続き困難となった。それらの影響で残念ながら研究の進捗状況が計画よりやや遅れてしまったことは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
「3年間のコロナ禍」と「研究代表者の長期病気入院」と「ロシアのウクライナ侵略によって共同研究者のいる隣国ハンガリーへの我々の渡航の再延期」など、さまざまな負の要因があったが、当初の計画を遂行すべく、スリット通過前後でペーストの記憶や割れやすくなる方向が変化するメカニズムを解明していく。ペーストの記憶はミクロにはコロイド粒子の形成するネットワーク構造の異方性として保持されると考えられ、揺れの記憶構造に対しては大きめのコロイド粒子(石松子)を用いて構造解析に成功したが、流れを記憶するこれまでのペーストのコロイド粒子は小さすぎて構造解析やその変化の観察には適さないことが判明した。そのため、適切な大きさのコロイド粒子に糖類などを添加して流れを記憶できるように調整してからX線CT解析を行い、流れを記憶した状況でのミクロな構造解析やスリット通過前後での構造変化を調べる。「流れの中でコロイド粒子の形成するクラスターが引き伸ばされた構造」を「異方的な棒状粒子」とみなしたシミュレーションを行うことで、スリット通過前後の構造変化の再現も可能になると考えられる。揺れの記憶から流れの記憶への変化も剪断変形の大きさの違いで捉えられると考えられるので、レオメーターを用いて揺れから 流れへの系統的な変化を詳細に調べる。
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