研究課題/領域番号 |
20K03892
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前山 伸也 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (70634252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | プラズマ乱流 / マルチスケール相互作用 / 射影演算子法 / マルチスケール物理 / 非線形相互作用 / 一般化Langevin方程式 / 統計的データ解析 / プラズマ・核融合 / ハイパフォーマンス・コンピューティング |
研究開始時の研究の概要 |
プラズマ中で生じる乱流は、大きく質量の異なる電子とイオンに起因して、大小様々なスケールの揺らぎを作り出す。近年のスーパーコンピュータを用いた大規模数値シミュレーションにより、広くスケールの離れたこれらの揺らぎの間にも、相互作用が存在することが明らかになった。本研究では、プラズマ物理・非平衡統計力学・データ科学のアプローチを利用して、プラズマ乱流マルチスケール相互作用を異なるスケール間の相関問題として捉え、コヒーレントな相関項と確率的な無相関項として表す一般化Langevin描像として定式化・体系化することを目指す。本研究の成果は、プラズマ物理学・核融合学・宇宙物理学・流体力学などに貢献する。
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研究実績の概要 |
プラズマ中で生じる乱流は、大小様々なスケールの揺らぎを作り出す。近年のスーパーコンピュータを用いた大規模数値シミュレーションにより、広くスケールの離れた揺らぎの間にも、相互作用が存在することが明らかになった。本研究では、プラズマ物理・非平衡統計力学・データ科学のアプローチを利用して、プラズマ乱流マルチスケール相互作用を異なるスケール間の相関問題として捉え、コヒーレントな相関項と確率的な無相関項として表す一般化Langevin描像として定式化・体系化することを目指す。
令和4年度は、第一に、昨年度多変数射影や離散時間射影に対する拡張を行った射影演算子法解析コードの応用として、実空間格子におけるサブグリッドスケール項の評価に適用した。乱流サブグリッドスケール項の時間発展を、粗格子の近傍複数点に対する射影として表すことで、波長に応じて異なる記憶関数による減衰効果を表現できることを示した(物理学会発表)。第二に、プラズマ乱流マルチスケール相互作用の直接数値シミュレーションによる研究として、代表者らが開発するGKVコードと欧州で開発されたGENEコードのベンチマークを行い、イオンスケール乱流による電子スケール乱流の抑制に対する定量的な一致を確認し、成果を学術論文誌に発表した。第三に、「富岳」を用いた大規模数値シミュレーションにより、将来の核燃焼プラズマを想定した電子加熱・複数粒子種混合プラズマにおけるマルチスケール乱流解析を実施し、高電子温度領域におけるマルチスケール乱流相互作用を介した輸送抑制効果を新たに発見し、成果を学術論文誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者の先行研究[S. Maeyama and T.-H. Watanabe, J. Phys. Soc. Jpn 89, 024401 (2020)]では、蔵本-Sivashinsky乱流シミュレーションデータをFourier展開することで、ある波長のモードに対するサブグリッドスケール項の効果を評価すべく、1対1射影に基づく射影演算子法を利用した。しかし、実空間格子において1対1射影を適用しても、定数減衰項しか表すことができず、波長に応じて異なる減衰率を表現することができなかった。この問題に対して、昨年度までに開発した多変数射影演算子法のコードを利用することで、近傍の空間点に対する記憶関数の広がりとして表し、波長に応じて異なる減衰率を記述することが可能となった。以上の様に、本研究課題の成果によって、従来の1対1射影に基づく手法では適用できなかった解析を新たに開拓した。 また、並行して進めている直接数値シミュレーションによるマルチスケール乱流物理の研究については、新たにマルチスケール相互作用による輸送低減効果を発見し、論文として成果が結実している。 以上から、順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで進めてきた射影演算子法と自己回帰分析との比較研究、および、マルチスケール乱流シミュレーションで観測される電子スケール乱流による実効的散逸の理論研究についてはおおよそまとまり、次年度成果として約束されている。 今後さらに、(i)開発した多変量射影演算子法を密度・ポテンシャル揺らぎの相関を伴う不安定モードへの解析への適用、(ii)実験配位におけるマルチスケール乱流解析といった応用研究を進める。特に(i)については、具体的に長谷川-若谷乱流に対する線形不安定な抵抗性ドリフト波モードが非線形項から受ける影響を解析する予定である。抵抗性ドリフト波不安定性は密度とポテンシャルの位相差による粒子輸送を伴う密度勾配駆動型の不安定性である。射影演算子法の特徴である、一般化Langevin方程式の記憶項として減衰だけでなく成長や位相の回転を表わせることを活用すると、従来の非線形項による揺動エネルギーの散逸機構だけではなく、非線形相互作用を介して揺動間位相差が変化することで、線形不安定化機構自身が影響を受けるといった新たな解析が拓けると期待される。
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