研究課題/領域番号 |
20K03918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
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研究機関 | 足利大学 |
研究代表者 |
安藤 康高 足利大学, 工学部, 教授 (60306107)
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研究分担者 |
西山 秀哉 大阪大学, 接合科学研究所, 招へい教授 (20156128)
田中 学 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (20243272)
茂田 正哉 東北大学, 工学研究科, 教授 (30431521)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | プラズマ溶射 / 熱プラズマ / CVD / 酸化物半導体 / 光触媒 / 旋回流プラズマ / 酸化チタン / 液相前駆体溶射 / 熱遮へいコーティング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、新規に開発した旋回流プラズマジェットを用いたSPPS装置を用いて、従来のCVD、PVD、噴霧熱分解法により形成された薄膜と同等の品質を有する薄膜の低温かつ高速合成を、大気雰囲気下で行う。従来の大気プラズマ溶射では、ナノオーダーの微粒子を分散させたサスペンション溶射(SPS)が、薄膜の微細組織制御に成功していることから、本研究のSPPSは、上流側熱プラズマで燃焼炎合成によるTiO2微粒子合成、下流側熱プラズマで合成したTiO2微粒子の溶融および基板上への輸送を行うことにより、SPSに準じた薄膜形成を可能にし、実用的なTiO2半導体薄膜の高速合成を図る。
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研究実績の概要 |
液相前駆体プラズマ溶射(Solution Precursor Plasma Spray; SPPS)は、液相前駆体を出発原料とするプラズマ溶射であり、減圧下で施工した場合には、従来のCVDと同様の緻密質薄膜の形成が可能であるうえ、薄膜の微細組織や組成の制御も容易である事から、機能性薄膜の高速形成プロセスとしての実用化が期待されている。しかしながら、大気圧下でのSPPSにより形成された薄膜は、強度が低く実用性に乏しいのが現状である。 そこで本研究では、高強度機能性薄膜の形成が可能な大気SPPS装置の開発を目的として、上流部と下流部に設置した2台のプラズマトーチにより構成された複合トーチを有する大気SPPS装置を考案・試作し、当該装置の高強度TiO2薄膜形成能力の検証を行っている。 当該装置の上流部熱プラズマでは噴霧された出発原料からのTiO2微粒子形成、下流部熱プラズマではTiO2微粒子の溶融および基板上への輸送を行うことにより、機能性、強度とも従来の機能性薄膜形成プロセス(CVD、PVD、噴霧熱分解法など)で形成されたものと同等のTiO2薄膜の高速合成を可能とする。 2021年度までに、複合トーチによる高強度薄膜形成が可能であることを明らかにし、2022年度は高強度薄膜形成メカニズムに関する検証を行った。その結果、出発原料に蒸留水を混合させなかった場合には高強度薄膜が形成されなかったのに対し、出発原料に蒸留水を添加した場合は溶射距離を短くするにつれて形成された薄膜のビッカース硬さは向上した。この結果から、上流で微粒子が形成されない場合は前駆体のまま基板に到達するため、溶射距離が短い場合前駆体が熱分解されるのに対し、上流で微粒子が形成される場合は、溶射距離が短い場合基板に到達した微粒子が焼結され高強度薄膜になる事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の研究では、上記問題を解決するため、下流部のプラズマトーチに自由噴流プラズマ入射角が15°になるよう設計した旋回流ノズルを設置したクロスフロー型複合トーチを試作し、薄膜形成実験を行った結果、下流部における微粒子加熱能力は大幅に改善し、従来プロセスと同等の強度を持つ高強度TiO2薄膜形成に成功した。 2022年度は、研究実績の概要欄で示した通り、上流部のプラズマトーチにて微粒子が形成された場合には、溶射距離が短い(皮膜形成中の基板温度が高い)条件で基板上の微粒子同士の焼結により高強度薄膜が形成されることが明らかとなり、薄膜形成メカニズム解明にに向けた有益な知見を得ることができた。 但し、当該高強度薄膜が得られたのは基板温度が高い条件であるため、薄膜のアナターゼ比率は低く、光触媒薄膜としては実用レベルに至っていない。 アナターゼ比率の高い高強度薄膜形成を実現させるためには、上流プラズマジェット中での微粒子形成に加え、下流プラズマジェット中での微粒子溶融及びアナターゼールチル変態点以下の基板温度下での溶融微粒子の堆積が必要であるが、現段階ではこれらを満たす実験条件の確立に至っていない。 以上の結果から、研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終目的が、アナターゼ比率の高い高強度TiO2薄膜の形成であることから、今後はアナターゼ比率の向上に向けた取り組みを行う。 高強度薄膜形成過程としては、以下のa)もしくはb)が考えられ、2022年度は過程b)による高強度皮膜の形成に成功したが、最終目的達成には過程a)による高強度薄膜形成を実現させる必要がある。 a)①上流での微粒子合成→②下流での微粒子溶融→③基板上での溶融微粒子の堆積・凝固 b)①上流での微粒子合成→②下流での微粒子加熱→③基板上での微粒子溶融もしくは焼結 従って、今後は、過程a)による高強度薄膜形成実現に向け、上流部の微粒子形成方法については、これまでの旋回流プラズマジェットを用いる方法の他、水蒸気もしくは湿り空気をキャリアガスに用いてTTIB溶液を噴霧する方法も検討する。また、下流プラズマジェット中での微粒子溶融については、プラズマジェットのエンタルピーを上昇させるためAr作動ガスへのHe添加も検討する。
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