研究課題/領域番号 |
20K03929
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大阪工業大学 (2021-2023) 京都大学 (2020) |
研究代表者 |
野澤 真人 大阪工業大学, 工学部, 講師 (60547321)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ブラックホール / 漸近的AdS / アインシュタイン方程式 / 時空特異点 / ワームホール / 対称性 / 時空構造 / 唯一性定理 / 厳密解 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,スカラー場を含む重力理論において,様々な次元での多様な漸近構造を持つブラックホール厳密解の分類・構成・解析を軸とした組織的研究を行う。我々の先行研究によるブラックホール唯一性定理の新証明法・対称性のカウントアルゴリズムを応用して時空の分類を行い、背後にある幾何学的意味あい、可積分性を明らかにする。また安定性解析により、スカラー場ポテンシャルの形状と無毛仮説の破れとの関係を解き明かす。
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研究実績の概要 |
2023年度は漸近AdS時空の厳密解の構成と探査について,2つの方向からの進展があった.
(1) 静的な漸近AdS時空でファントムスカラー場を考えると,動径方向にのみ依存する静的な解は3つに分類されるが,これらにはそれぞれ2種類のブランチが存在することが,我々の先行研究で知られていたが,その理由は明らかでなかった.そこで新たにこれらの解を加速させたC計量を構築し,C計量特有のフリップ対称性により,静的極限により2つのブランチが存在することを明示的に示した.この解はワームホール時空を加速させた初めての物理的計量である.特にワームホールの加速に円錐状特異点は必ずしも必要ないことを明らかにした.またPenrose図の分類を行い大域構造を議論した.
(2) C計量を含むPetrovII型のダイナミカルな解として,Robinson-Trautman(RT)計量がある.我々はN=2超重量理論においてスカラー場を含む場合の,新たなRT解 (I-a型, I-b型,II型)を構築した.I-a型の基礎方程式はRicci flowと呼ばれる幾何学的フロー方程式の可積分条件となっていることを示した.さらにI-b型の基礎方程式はPerelmanがThurston予想を解決するために用いたRicci flow方程式のペアと完全に一致することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,AdS時空における無毛仮説の検証を厳密解を通して行った.漸近AdS時空では代数的な解の構成法が適応できず,このような厳密解が得られること自体が貴重であり,これを通して大域構造などの重要な性質を完全分類することができた.また,アインシュタイン方程式とRicciフローの関係は予想外の結果であり,今後進展が期待されるが,そのぶん数学のフォローには時間がかかっている.そのため「おおむね」順調だと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
スカラー場を含むRobinson-Trautman時空を帯電させた時空については,現在すでに議論を進めている.またこれまで漸近平坦/AdS時空にかかわらず,正則な回転ワームホール時空の厳密解の構成には成功していない,そこで軸対称定常なワームホールのスカラー場に適切なansatzをおくことにより,厳密解の構成と大域構造の分類に着手する.また大域ワームホール時空の唯一性の証明で仮定されていたスカラーチャージの条件について再考し,より有効な証明法について議論する.
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