研究課題/領域番号 |
20K03932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大河内 豊 九州大学, 基幹教育院, 教授 (40599990)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | KKバブル / 真空崩壊 / 特異点を持つバウンス解 / 弦理論における4次元宇宙 / 宇宙定数 / クインテッセンス / 宇宙項 / 素粒子物理学 / 真空の相転移 / 超弦理論 |
研究開始時の研究の概要 |
現在,我々の宇宙は加速膨張していることが観測により明らかとなっている.標準宇宙理論において,その膨張を引き起こすのは宇宙項であるが,重力理論の基本スケールと比較して,10-120程度も小さいことがわかっている.この大きな桁数の違いを自然に説明する理論を構築することは,現代物理学におけるひとつの大きな課題となっている.本研究では,この宇宙項問題を弦理論(或いは高次元理論)における真空間の遷移における触媒効果を用いることで,定数の微調整を行うことなく解決する.特に,4次元宇宙における放射と物質を実現するために導入する高次元の構成物が触媒となり,小さな宇宙定数を説明するメカニズムを確立する.
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研究実績の概要 |
今年度は,超弦理論における真空構想の理解を深めるために,超弦理論特有の真空崩壊であるKaluza-Klein真空崩壊について研究した.この真空崩壊は,弦理論が予言する内部空間が消失することにより,何もない時空への崩壊を起こす,興味深い弦理論特有の例となっている.場の理論の真空崩壊の研究では,しばしばバウンス解とよばれるユークリッド化された理論の古典解が用いられる.これまでのKKバブルに関する先行研究では,特異性をもたない性質のよい古典解に注目が集まっており,特異性を含む解についてはあまり調べられてこなかった.我々は,近年異なる文脈で発展したテクニックをこのKKバブルに応用することで,特異性のあるバウンス解が真空崩壊にどのように影響するかについて調べた.その結果,特異点を持つことにより,真空崩壊は早くなり,従来思われていた以上の早さ準安定状態は崩壊することがわかった.これは,宇宙創生の時期に,高エネルギーの準安定状態が繰り返し現れ,次々に移り変わりながら我々の宇宙が創生された可能性を示唆している.また,我々は,その結果にしたいして熱力学的考察を行った.特異点を持つことで,エネルギー的にロスする部分はあるが,それを上回るほどのエントロピーの増加が起こり,それにより,トータルでみると,より効率的な崩壊を与えることがわかった.今回は,5次元時空の一つが筒状に巻き付いた形の内部空間を考えたが,,今後より一般的な場合でも試みていく予定である.この業績は論文としてまとめarXivに投稿し,現在学術誌に投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究者の所属の変更があり,それに伴う業務等で研究時間が減ったことと,研究会に参加することができなかったため,やや遅れた感じになっている.
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究は弦理論における多くのKKバブルに類似したモデルにも適用可能であるので,より一般化した状況における真空崩壊を考えていく予定である.また,今回は詰めきれなかったネガティブモードの問題もあるので,そこを精査してより精度の高い議論をしていく予定である.
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