研究課題/領域番号 |
20K03947
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸部 和弘 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (20451510)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | フレーバー物理 / フレーバーアノマリー / レプトクォーク / 標準模型を超える物理 |
研究開始時の研究の概要 |
B中間子の幾つかの崩壊現象で報告されている食い違い(アノマリー)を説明する新物理の候補として、レプトンとクォーク両方と結合するレプトクォークを含む理論がある。このような理論は、我々が今まで研究してきたミュー粒子異常磁気能率にも大きな効果を及ぼすものもあり、B中間子崩壊のアノマリーとミュー粒子異常磁気能率のアノマリーを複数同時に説明できるレプトクォークの理論は可能なのかを、本研究では明らかにしようとする。こうしたアノマリーを手がかりにした模型構築及びその現象論的解析から、レプトクォークを含む理論で、より統一性を持った素粒子理論を構築出来るのかを研究する。
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研究実績の概要 |
ミュー粒子異常磁気能率(muon g-2)は実験的に非常に精密測定されている物理量であるが、その測定値が素粒子標準模型の精密に計算された予言値と食い違っていることが報告されている。もしその食い違い(アノマリー)が新物理によるものだとしたら、それは新物理の重要なヒントになり得ると期待される。我々は、ベクターライクなレプトンやクォークを含むZ'模型で、muon g-2アノマリーを説明しようとする時の、ヒッグス粒子の崩壊現象(h→μμ)への影響を調べている。ヒッグス粒子の崩壊現象はLHC実験などで精密測定が進むと期待されるので、これへの影響がさまざまな模型でどのようになるかを調べることは重要である。また最近、muon g-2の格子計算も進展があり、今までの計算値との食い違いも指摘されるなど、まだ多方面からの研究が必要な段階と言えるので、今後の進展についても注視する必要がある。
また、B中間子の崩壊現象でも、標準模型の予言値との食い違い(アノマリー)が報告されている。B→D(*)lν崩壊で終状態のレプトンlがτの時とそれ以外の時の崩壊率の比R(D(*))の測定値のアノマリーや、B→K(*)ll崩壊で終状態のレプトンがμの時とeの時の崩壊率の比R(K(*))の測定値のアノマリーなどが指摘されていた。しかしLHCb実験の最新の結果では、R(K(*))の測定値が標準模型とほぼ一致していることから、以前言われていた新物理の解釈も見直す必要が出てきた。これらのアノマリーを同時に説明できる可能性として、ベクターレプトクォーク模型の可能性が指摘されているが、我々は現在の実験の状況をこの模型でどこまで説明できるのか解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベクターレプトクォーク模型は、ベクターレプトクォークに質量を与える機構を考えると、それ以外にも低エネルギースケールで新粒子が存在するなど、現実的な模型は少々複雑になる傾向がある。そのため当初思っていたより解析が複雑であり、研究の進展にやや遅れが出ている。さらにベクターレプトクォーク模型は、上で述べたR(D(*))とR(K(*))のアノマリーを同時に説明できる可能性として指摘されてきたが、最近のLHCb実験の結果ではR(K(*))のアノマリーはほぼなくなったので、もう一度新物理の解釈も見直す必要が出てきている。よってこれらのことを考慮して着実に計画を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
ベクターレプトクォーク模型は、現実的な模型を考えると低エネルギーでベクターレプトクォークだけでなく、その他にもさまざまな粒子が存在している。よってそれらの効果も含んだ解析を行うことが重要である。また上でも述べたが、当初に比べて実験結果も進展があったので、最新の結果を考慮して以前にやられている解析なども見直す必要もあるので、それらも考慮に入れた解析を行う予定である。
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