研究課題/領域番号 |
20K03948
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 大阪大学 (2021-2022) 京都大学 (2020) |
研究代表者 |
服部 恒一 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (10730252)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 近藤効果 / カイラル対称性 / 強磁場 / QCD相図 / 量子相転移 / 不純物 / カイラル対称 / 磁気流体力学 / クォーク・グルーオンプラズマ / 輸送現象 |
研究開始時の研究の概要 |
相対論的重イオン衝突では、強磁場中におけるクォーク・グルーオンプラズマの物理が既に大きな潮流になっている。本研究では強磁場中のクォーク・グルーオンの輸送理論を確立することを目的として、相対論的磁気流体力学に現れる輸送係数の理論計算を遂行する。重いクォークも少数の不純物として含まれているため、物性系で良く知られた不純物効果である「近藤効果」も現れることが期待される。特に、不純物側に注目した媒質中の重クォークの拡散現象と、逆に媒質側に注目した不純物を含む磁気流体力学を統合的に理解し、有限密度系と強磁場系の密接な類似性から予言される新たな輸送現象「磁場近藤効果」を探求する。
|
研究実績の概要 |
量子色力学で記述される物質の相構造の解明は素粒子・原子核分野の大きな課題の一つであり、理論・実験、及び格子QCDによる第一原理数値シミュレーションによる取り組みが行われている。これらの相構造は、通常は温度とバリオン密度を軸とした「QCD相図」に集約されている。強磁場という新たな軸の導入と、重クォークを不純物として考慮した場合の2点から、QCD相図研究に新たな要素を導入し、これらの状況下で生じる量子相転移点を見出した。知る限りにおいて、QCD相図において量子相転移点が提案されたのは初めての成果である。 重クォークを考慮しない場合、QCD真空を特徴づけるカイラル対称性の破れは、強磁場下で増幅されることが知られている。これは磁場触媒効果(magnetic catalysis)と呼ばれ、最近10年の間に格子QCDシミュレーションによる研究が進められてきた。QCDが本来持つ強結合性と磁場触媒効果が引き起こす量子多体効果による強結合性の協奏による興味深い現象が報告されてきた。一方、強磁場下でさらに不純物が存在する状況では、近藤効果として知られる別の量子多体効果が生じる。元来、近藤効果はフェルミ面近傍の励起によって生じる有限密度効果であるが、磁場によって誘導される磁場近藤効果が新たに提案されていた。 今回の成果では、磁場触媒効果によってカイラル対称性の破れが増幅される効果と、近藤効果によって抑制される効果の競合がある事に注目した。ゼロ温度で磁場の強度を変えるにしたがって、カイラル対称性の破れが支配的な真空から、近藤効果が支配的な真空への転移が生じる事、つまり量子相転移点が存在すること、を有効模型による解析の範囲で示した。この結果は会議録の形で出版されたと共に、論文が現在査読中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁場中で起こる磁場触媒効果と近藤効果の競合という課題のひとつを論文にまとめることができた。量子相転移の提案という成果が出たことで、数値シミュレーションや実験での検証につながる可能性が開けた。
|
今後の研究の推進方策 |
QCD相図に対して新たな理論的提案ができたため、数値シミュレーションや実験での検証につなげたい。特に、磁場下での格子QCDシミュレーションはこの10年で盛んに行われたため、その発展として磁場近藤効果が検証できるような物理量の提案を目指したい。
|