研究課題/領域番号 |
20K03951
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
安武 伸俊 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (10532393)
|
研究分担者 |
丸山 敏毅 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354882)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
|
キーワード | 中性子星 / 状態方程式 / 分子動力学 / QCD相図 / 原子核(理論) / 宇宙物理(理論) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、第一原理計算に基づく現実的な相互作用を「色分子動力学」に反映させ、クォーク=ハドロン相転移を数値計算によって再現し、明らかにすることを目的とする。京コンピューターによって実績を積んできたHAL QCD Collaborationによって導出されたバリオン間相互作用を使って、高密度状況下におけるクォーク=ハドロン相転移が一次相転移であるかクロスオーバーであるかを明らかにする。さらに、天文の理論計算に必要な熱容量や熱輸送係数、状態方程式などの物理量を「色分子動力学」から直接導出することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の課題は大きく2つあった。一つは色分子動力学計算コードの高速化。もう一つは、スピンも含めた現実的な相互作用を取り入れた色分子動力学計算へのコードの拡張である。 まず、一つ目の課題に関しては、完全達成できたと言える。GPUを伴うスーパーコンピューティングにより、色分子動力学から1日程度で状態方程式を1本作ることができるほどに我々の計算コードは高速化された。許された計算資源を最大限に活用しているため、ハード自体を変えない限りはこれ以上の高速化は得られないであろう。 次に2つ目の課題に関しては、発展途上である。この問題は、計算機の問題というよりは、原理的な問題である。少数系ではこの問題は解決しており、バリオンの各質量を再現することに成功している。しかし、多体問題におけるカラー磁気相互作用(スピンと色の合成相互作用)は、数百程度の粒子系で平均化する必要が出てくることがわかった。これらは、ヤング図など用いた群論による解析によって明らかになったことである。少数系から多体系までを網羅的に解析した研究はこれまでなかったために、我々独自に導き出す必要があったために予定よりも大幅な研究時間を必要とした。 現在は、課題1における成果を論文としてまとめている一方で、課題2の解析の結果を精査し、まとめている段階である。当初の目標であった天文観測や原子核実験による制限を踏まえた上での状態方程式を得ること自体は可能となっているために、最低限の課題はクリアしていると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目標であった天文観測や原子核実験による制限を踏まえた上での状態方程式を得ること自体は可能となっているために、最低限の課題はクリアしていると考える。しかしながら、もう一方の課題であった「スピンも含めた現実的な相互作用を取り入れた色分子動力学計算へのコードの拡張」に関しては、少数系から多体系までを網羅的に解析した研究はこれまでなかったために、我々独自に導き出す必要があったために予定よりも大幅な研究時間を必要とした。これに関しては、ひとまずストレンジネスを考えなければ、網羅的なスピンと色の合成方法がわかってきたために、精査した上でコードに組み込むだけである。
|
今後の研究の推進方策 |
すでにおおよその問題が片付いた課題1「色分子動力学計算コードの高速化」に関しては、天文観測や原子核実験と無矛盾な結果を得ているので、これを一旦論文としてまとめる必要がある。また、もう一つの課題であった「スピンも含めた現実的な相互作用を取り入れた色分子動力学計算へのコードの拡張」に関しては、考える粒子系において単純に平均的な相互採用を使えば良いわけではないということが明らかになった。つまり、粒子からすると無限系に近い、星の状態方程式のような場合はカラー磁気相互作用は収束して平均化された合成則を用いることが可能であるが、原子核衝突実験のような有限系の計算への応用は単純ではなくなってくる。今後は考えている状況ごとに、適切な合成則を用いる必要があり、それらのもとで有限系の計算へと拡張していく予定である。
|