研究課題/領域番号 |
20K03964
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日野原 伸生 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80511435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 不安定核 / 対回転 / 原子核密度汎関数法 / 対相関 |
研究開始時の研究の概要 |
自然界に安定に存在する原子核よりも中性子数の多い中性子過剰不安定核は、現在宇宙に存在する原子核の多くを生成した元素合成過程であるrプロセスにおいて重要な役割を果たしていると考えられるが、安定核とは異なった様々な性質が現れる。原子核内の中性子や陽子がペアを組んで安定化する対相関の、中性子過剰不安定核特有の性質を明らかにしつつ、原子核密度汎関数理論で不安定核の質量を精密に計算し、rプロセスの全貌を明らかにする。
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研究実績の概要 |
中性子過剰不安定核に特有な原子核の対相関の性質を明らかにすることが本研究課題の目的である。2022年度は以下の3つの点について進展があった。 平均場理論に基づいて核内で局在化したα粒子の遷移振幅を評価した。αノックアウト反応断面積は原子核表面にどの程度α粒子が形成されているかの手がかりとなるが、反応断面積の錫同位体依存性の傾向を遷移振幅によって再現できた。中性子―陽子の混合のない平均場波動関数を用いた遷移振幅は中性子と陽子部分の積で表わされ、α粒子はスピンが逆向きの中性子、陽子ペアから構成されていることから、特に錫同位体のαノックアウトでは中性子の対相関が重要な役割を果たすことが明らかとなった。 有限核で支配的な対相関はスピンが逆向きの核子ペアの間に引力が働くスピン一重項対相関であるが、中性子星の高密度領域では二核子のスピンの向きが揃ったスピン三重項の対相関によっても超流動が起きることが知られている。有限核での同種粒子間のスピン三重項の対凝縮を示す指標を明らかにした。局所密度近似の範囲内ではスピン三重項の対凝縮を示す秩序変数はスピンカレント(テンソル)対密度であり、スピン一重項の対凝縮の秩序変数である局所対密度と連動して、スピンカレント対密度が有限となる、つまり、有限核ではスピン一重項とスピン三重項の対凝縮は混合して発生することが明らかとなった。また、スピンカレント対密度は局所対密度とは異なる軌道依存性を持っているため、スピン三重項対相関は質量の異なる不安定核領域の対相関の性質を、安定核領域のものとは異なったものとする可能性があることがわかった。 以前から進めている荷電半径の計算については、Ca同位体に焦点を宛て、荷電半径の同位体変化が陽子のどの1粒子軌道の変化によってもたらされているのかの詳細な分析を、複数の密度汎関数を用いて進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にはなかった同種粒子のスピン三重項対相関に関する研究も開始することができ、原子核の対相関のより包括的な理解に向けた研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
対回転の慣性モーメント、荷電半径、α粒子の遷移振幅、スピン三重項対相関などの複数の側面から進めている研究を論文としてまとめていきたい。
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