研究課題/領域番号 |
20K03973
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中里 健一郎 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (80609347)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 超新星ニュートリノ / 重力崩壊型超新星爆発 / 原始中性子星冷却 / ブラックホール / 核物質状態方程式 / 超新星背景ニュートリノ / 原始中性子星 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽の約10倍以上の質量を持つ恒星はその進化の最後に重力崩壊を起こし、中心部で原子核密度を超えると、核力の斥力芯によってバウンスし衝撃波を生じると同時に大量のニュートリノ(超新星ニュートリノ)を放出する。その結果として超新星爆発が起こると中性子星が形成されると考えられている。本研究課題では、これまであまり研究されてこなかった、数十秒にわたる長いスケールの時間変動に着目して、超新星ニュートリノのスペクトルを数値シミュレーションに基づき予測する。さらに、超新星中心部に存在する高密度核物質の性質(状態方程式)が放出されるニュートリノにどのような影響を与えるのか、系統的かつ包括的に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本年度は、前年度までの研究で得られた結果に基づき、超新星背景ニュートリノのスペクトルや検出感度の予測を行なった。超新星背景ニュートリノとは過去に起こった重力崩壊型超新星爆発が放出したニュートリノによる宇宙からの背景放射である。個々の超新星が放出するニュートリノのスペクトルについては、前年度までの研究で得られた early phase, late phase 各々の結果を統合して評価し、核物質状態方程式による違いについても調べた。さらに超新星爆発を起こす場合だけでなくブラックホールが形成される場合も含めて、超新星背景ニュートリノの理論モデルを構築した。また検出感度の予測は次世代の水チェレンコフ検出器であるSK-Gdとハイパーカミオカンデを想定して行なった。 結果として、検出感度は核物質状態方程式だけでなく、超新星爆発で形成される中性子星の質量分布やブラックホールが形成される割合によっても変わり、特にブラックホール形成の割合については検出感度の依存性が状態方程式によって異なることが分かった。また、ハイパーカミオカンデにおいて10年間観測を続けた場合、今回の研究で検討したほとんどの場合で3σ以上の感度で検出が可能であることが分かった。以上の成果については、すでに査読付き欧文論文誌において論文を出版ずみである。 その他に、超新星から放出されるニュートリノの数値計算に関して、late phase で原始中性子星の表面付近で出現する原子核のモデルについての検討も行なった。具体的には、これまで採用していた単一核種を仮定した局所密度近似のモデルに加え、核統計平衡を仮定したモデルを用いてニュートリノ光度曲線を評価した。その結果、後者のモデルでは核物質状態方程式による違いがあまり見られないことが分かった。この成果についても、すでに査読付き欧文論文誌において論文を出版ずみである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超新星背景ニュートリノの研究に関しては、その他の不定性も大きいため、観測から核物質状態方程式のモデルを識別する方法を提案するには至らなかった。だが、これは研究開始時から困難と想定していた問題であり、すでに査読付き欧文論文誌で発表された程度の成果は得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
超新星背景ニュートリノの検出感度評価の際に大きな不定性となっていたブラックホール形成の割合は、最近の銀河の化学進化に基づくモデルから見積もることができる。そこで、このモデルに基づいて超新星背景ニュートリノのスペクトルや検出感度の予測を行ない、核物質状態方程式のモデル識別の問題を再検討する。また原始中性子星の表面付近で出現する原子核のモデルについても、妥当な仮定の検討が課題として残されており、これに取り組む。
|