研究課題/領域番号 |
20K03975
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
前田 健吾 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10390478)
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研究分担者 |
石橋 明浩 近畿大学, 理工学部, 教授 (10469877)
飯塚 則裕 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40645462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | AdS/CFT双対性 / アトラクター機構 / 極大対称ブラックホール / 半古典近似解 / 光的エネルギー条件 / 強結合な場の理論 / エンタングルメントエントロピー / AdS/CFT / 場の量子論 / エネルギー条件 |
研究開始時の研究の概要 |
流体や電磁場などの通常の古典的物質場では、エネルギーは非負の性質を持つ。この性質は曲がった時空での重力理論を解析する上で基礎となる性質である。一方、量子場を考慮すると、常にエネルギーは非負にならず、局所的に破れえる。「平均化されたエネルギー条件」は、例え局所的に破れても大域的には保たれることを主張しているが、一般の曲がった時空でどの程度保たれているのかは良くわかっていない。本研究では、曲がった時空での「平均化されたエネルギー条件」やエンタングルメントエントロピーの基礎的性質を強結合な場の理論が重力理論と双対であることを主張するAdS/CFT双対性を用いて、重力理論から解明する。
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研究実績の概要 |
今年度は、漸近的AdS時空において、二種類のU(1)ゲージ場とスカラー場が結合した重力理論において極大対称ブラックホール解の解析をAdS/CFT対応を用いて行った。極大対称なブラックホール解は、対応する強結合な場の理論においてゼロ温度の基底状態を表す解であり、どのような基底状態が一般に存在しうるかという観点から研究をする意義は大きい。また、重力理論の観点からは、ゲージ場とスカラー場が結合したブラックホール解の性質を引き出す上でも重要である。今年度の研究成果として、スカラー場が一般のポテンシャルを持つ場合にもアトラクター機構が有効であることを確認した。また、一般のポテンシャルにおいて、スカラー場の質量を適当に選ぶと二種類の極大対称なブラックホール解が存在することがわかった。一つはホライズンで正則な解であり、もう一つはホライズンで特異点を持つ解である。特に興味深い点として、後者の解の方が正則な解よりも熱力学的に安定であることを確かめた。この結果はJHEPという雑誌に掲載された。今年度取り組んだもう一つの研究成果は、AdS/CFT対応を応用して、半古典近似の下で量子効果を取り入れた新しいブラックホール解を構築したことである。半古典近似とは、量子場の真空期待値をアインシュタイン方程式の物質場のエネルギー運動量期待値に取り入れたもので、物質場の量子効果を一定程度取り入れた時空を構成することが可能である。一般の曲がった時空ではとても解くのが難しい問題であるが、AdS/CFT対応を応用して時空次元が低い3次元時空において初めて量子効果を取り入れたブラックホール解を構築することに成功した。3次元時空では、真空期待値がゼロであるBTZブラックホール解が存在することがわかっている。今回の研究では、3次元の重力定数が一定以上大きいと必ず量子的に不安定であることを導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、半古典近似を用いたブラックホールの解析に成功し、量子的に不安定となるブラックホール解を発見することができた。また、アトラクター機構という新しい研究分野に進出し、ブラックホールの特異点について新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究に引き続き、半古典近似を用いたブラックホール時空の解析に取り組んでいく。今年度までの研究として、BTZブラックホール解が量子的に不安定な場合があることを突き止めたが、量子場のエネルギー運動量テンソルがゼロでないブラックホール解と熱力学的にどちらが安定か議論の余地がある。今後は自由エネルギーの導出を行い、より量子的に安定な解を探っていく。また、時空の次元が高い場合や偶数次元の場合にも解析を拡張し、より一般的な性質を導き出したい。一方、今年度の研究において、U(1)ゲージ場と結合したスカラー場による極大対称ブラックホール解の解析を行ったが、この解析を回転している極大対称なブラックホール解に拡張していく予定である。
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