研究課題/領域番号 |
20K03976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
村田 佳樹 日本大学, 文理学部, 准教授 (00707804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 相対論 / 一般相対論 / ブラックホール |
研究開始時の研究の概要 |
漸近AdS時空中における一般相対論の研究は十分進んでいるとは言えず、特に回転ブラックホールの非線形ダイナミクスに関してはほとんど理解されていない。本研究では、回転ブラックホールの不安定性の非線形ダイナミクスを解き、その終状態を特定する。我々はまず、終状態の候補の一つである共鳴ブラックホール解を構成し、AdS時空における回転ブラックホールの相図を決定する。次に、共鳴ブラックホールの安定性解析を行い、終状態の候補となるブラックホール解を特定する。最終的に非線形シミュレーションを実行し、回転ブラックホール不安定性の非線形ダイナミクスの終状態を決定する。特に、宇宙検閲官仮説が破れるかどうかを精査する。
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研究実績の概要 |
最近、クリロフ複雑度が量子系の複雑さとカオス性の尺度として提案された。我々は、古典的にカオス的な系を量子化することによって得られる量子力学的な系の典型的な例として、スタジアムビリヤードを考え、演算子と状態のクリロフ複雑度を数値的に評価した。クリロフ複雑度の指数関数的な成長は見られなかったが、ランチョス係数の分散と古典的リヤプノフ指数、および量子エネルギーレベルの隣接間隔の統計的分布との明確な相関関係が見られた。これにより、ランチョス係数の分散が量子カオスの尺度となり得ることが示された。この結果の普遍性は、シナイビリヤードの類似した分析によって支持されている。 また、我々は、境界条件として無限遠でのロビン境界条件を持つ漸近AdSブラックホールの準固有振動を研究した。背景時空として平坦なイベントホライズンを持つシュワルツシルトAdS4時空を考え、そのスカラー場の摂動を調べた。無限遠でのスカラー場の遅い減衰モードと速い減衰モードの主要係数をそれぞれφ1とφ2で示し、その間に線形関係 φ2=cot(θ/2)φ1を仮定する。ここで、θはロビンパラメータと呼ばれる定数であり、θ~θ+2πの周期的である。ロビンパラメータのある範囲では、境界条件によって駆動される不安定性が存在することが分かった。また、境界条件のパラメトリックサイクル:θ=0→2πにおけるQNMスペクトルのホロノミーも発見した。1サイクル後、QNMのn番目の高調波は(n-1)番目の高調波に移動することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究により、ランチョス係数の分散と古典的リヤプノフ指数、および量子エネルギーレベルの隣接間隔の統計的分布との明確な相関関係が見られ、ランチョス係数の分散が量子カオスの尺度となり得ることがわかったため。 また、境界条件として無限遠でのロビン境界条件を持つ漸近AdSブラックホールの準固有振動を研究したことにより、QNMスペクトルのホロノミーが存在することを発見したため。
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今後の研究の推進方策 |
我々の研究により、超放射不安定性を簡単に扱う手法が確立されつつある。その方法により、新しいブラックホール解の発見につながっている。今後は、動的な安定性の解析、超放射不安定性の時間発展シミュレーションなどの研究に発展させていく予定である。特に終状態のブラックホール解を特定し、それが場の理論側でどのような相 に対応しているのかを決定したい。 裸の特異点が形成された場合は、それが場の理論側でどのようなシグナルとして現れるかを調べていく。また、最近の我々の研究で、ブラックホール時空中の量子論を、スピン系を用いて調べることができることが分かってきたので、ホーキング放射の実験的検証に向けた研究も行っていきたい。
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