研究課題/領域番号 |
20K03984
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 肇 東北大学, 電子光理学研究センター, 名誉教授 (20178982)
|
研究分担者 |
宮部 学 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (10613672)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | カイラル相転移前駆現象 / 電磁カロリメータBGOegg / 電磁カロリメータPWO-F / BGOegg電磁カロリメータ / UA1アノマリ |
研究開始時の研究の概要 |
原子核内部の標準密度は約10の14乗g/cm3であり、宇宙開闢後1000分の1秒後の宇宙の密度に匹敵する。そこでは、自発的に破れたカイラル対称性が部分的に回復することによって、構成子クォーク質量が減少し、原子核中を伝播するハドロンのスペクトル函数が変化する等のカイラル相転移前駆現象が現れると考えられる。本研究は、原子核内部にη'(958)メソンを生成し、原子核内部で電磁崩壊する事象(η'->γγ)を測定することによって、カイラル相転移前駆現象を捉え、質量の起源を探究する。
|
研究実績の概要 |
原子核内部は、宇宙開闢時の密度に匹敵する超高密度状態であり、そのような世界の真空は現在の私たちの身の回りの真空とは性質が異なると考えられている。それゆえ、原子核内部に侵入してゆくと真空の相転移前駆現象が起こると期待されている。本研究では、GeV領域の光子ビームを用いて原子核内部にη’(958)メソンを生成し、その崩壊の終状態にハドロンを含まないη’→γγ崩壊を捉えることによって、原子核中のη’メソンの性質変化を調べる。以って真空の相転移前駆現象を探索することを目的としている。 計画遂行にあたり、銅を原子核標的として用いることにしている。銅原子核は、これまで使用してきた炭素原子核に比べて大きいので、そこでの相転移前駆現象の観測では有利となるが、光子ビームとの相互作用による放射線量は増加するため、実験棟の改造が必要となった。新型コロナ禍で多少工事は遅れたが、令和5年度内に実験棟の改造が終了し、放射線安全管理上の認可を得た。 令和5年度は、超前方電磁カロリメータPWO-Fの調整と、その後継電磁カロリメータの設計・クリスタル選定を行った。既存の電磁カロリメータPWO-Fの調整では、コッククロフトウォルトン方式の昇圧部品のスペアが底をつき、通常の高電圧印加方式の分圧部品を混在して使用することにした。そのため、252本のPWO単結晶で構成されたPWO-F電磁カロリメータの一部を解体して修理・調整を行った。 一方、これまで未解析のデータの解析が進み、原子核中でη’→γγ崩壊したと見られる事象の統計量を増やすことに成功した。これにより、観測されたシグナルの統計優位性は、4シグマを越えた。これは、データ解析の大きな成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)想定していた実験棟改造工事は無事終了し、放射線管理室からの認可が得られた。 2)超前方電磁カロリメータPWO-Fの修理・調整が進行している。 3)未解析のデータの解析が進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
現在進行中の超前方電磁カロリメータPWO-Fの修理・調整を完了し、主検出器である電磁カロリメータBGOeggと組み合わせたデータ収集系を構築する。これにより、銅原子核を標的とする低バックグラウンドのデータ取得が可能になる。今年度、春から夏にかけて、SPring-8のLEPS2ビームラインにてGeV光子ビーム照射を行い、データ収集を行う予定である。
|