研究課題/領域番号 |
20K03999
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 特定教授 (50253050)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 光子-光子散乱 / 光検出器 / 実光子弾性散乱 / 光子光子衝突型加速器 / 電子、光子識別 / 光子偏極 / 電子陽電子対生成 / 光子ー光子衝突型加速器 |
研究開始時の研究の概要 |
実光子同士を衝突させる光子・光子衝突型加速器を世界で初めて建設し,そこにおいて,実光子散乱を観測することを目的とする。 本補助事業期間内においては,測定器の荷電粒子と光子の弁別性能と,事象が重なる場合(パイルアップ)に対応したデータ解析手法の研究を中心に研究する。特に非常に大きな背景事象となる,電子陽電子対生成の除去性能が実験成功の鍵である。 中国や欧州の共同研究者は,加速器の設計,レーザーシステムの設計検討を中心に活動しており,本研究と彼らの進捗状況をお互いに緊密に付き合わせることよって,実験システムの工学設計を完結することを目指す。
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研究実績の概要 |
古典電磁気学によって記述される電磁波は電荷を持っておらず、電磁波同士は交差してもすれ違うだけである。しかし量子電磁気学の高次効果を考慮すると電磁波を量子描像である光子は弾性散乱をすることが予測されている。この現象は古くから知られているがその直接観測は難しく、原子核周辺の仮想光子の散乱として観測されているが、実光子の弾性散乱はいまだ未観測である。本研究はそのための実験装置として光子光子衝突型加速器を用いることを想定している。光子光子衝突型加速器は,新たな素粒子反応実験装置として考案されたがいまだ実現されておらず、その構築自体も加速器開発として大きな意義がある。 この現象の観測には、電子陽電子対生成と光子散乱の弁別が大きな課題である。特に対生成で生じた陽電子が測定器の物質中で静止すると光子対を生成し、これは実光子弾性散乱と類似の信号を検出器に残すためのその排除が不可欠である。これが原理的に可能であることは、シミュレーションによる研究によって示されているが、そこで仮定した測定器を構築するための基礎研究が重要となる。 本研究ではGAGGやCsIとプラスチックシンチレーターを組み合わせた検出器を用いて,電子陽子対生成と光子対の信号処理による識別性能の系統的調査を行ない粒子識別の基礎データを得てきた。2023年度は、陽電子を放出する放射線源を新たに入手し、その信号を二つの検出器で同時検出することによって、実際の実験において陽電子が生じる信号に対する検出器の反応を調査するための測定器系を構築した。 これと並行して信号事象と背景事象を識別し,信号事象を見出すための測定器の改良の検討を開始した。また実際の実験場所として議論を行っている中国の研究者との交流が新型コロナの影響でとどまっていたが、それを再開し特に中国の研究者との技術交流を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検出器による粒子識別性能の研究に関して,CsIシンチレータ,GA GGシンチレータ,プラスチックシンチレータを入手しそれらを組み合わせた検出器の性能を系統的に調べてきた。2022年度はデータ解析の定量化によりさらなる改良点を見いだすという進展をみることができた。 2023年度は、陽電子を放出する放射線源をもちいて、実際の信号を模擬しそれを検出するためのセットアップを行った。 一方,中国科学院高能物理学研究所を訪問して実験の実現可能性について議論する予定であったが,新型コロナウイルスの中国における状況等を考慮し訪問は控えてきた。2023年度後半から中国の研究者との討論を開始することができたが、当初の予定より進展が遅れている。また当初2021年に開催予定であった光子衝突型加速器に関する国際研究会の開催が2024年になるなどの新型コロナウイルスの影響があった。
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今後の研究の推進方策 |
検出器による粒子識別性能の研究に関し,シンチレーション検出器を研究により得られた知見をもとに改良する。現在のシステムの上下に新たなプラスチックシンチレーション検出器を配置し宇宙線の飛来を検出できるようにする。 2023年度に入手した放射線源Na22は陽電子を放出し、その陽電子が検出器内で反応することによって光子対生成する。この光子対生成事象は本研究における信号と非常に類似したものであり,信号検出性能の評価に最適である。以上の改良と新たな線源により電子光子識別能力の評価の精度向上を図る。 データ解析に関して、実験に不可欠な光子衝突頻度(ルミノシティ)の測定についてシミュレーション研究に着手した。また電子陽電子対生成事象排除の性能向上にむけた陽電子断層撮影技術の応用を検討している。 2023年度は中国研究者とのリモートによる議論が再開された、2024年後半には中国において光子衝突型加速器研究会が計画されている、その機会に中国を訪問し直接研究者と打ち合わせを行いたいと考えている。
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