研究課題
基盤研究(C)
白色矮星連星の最期の姿であるIa型超新星は、爆発後の光度変化に個性がなく、永らく宇宙論的距離にある標準光源とされてきたが、近年、光度やスペクトルの変動に多様性があることが指摘され、我々の宇宙を理解する上で不定性の一因となってきた。本研究はIa型超新星の多様性の起源を解明すべく、研究期間中に稼働するX線分光撮像衛星XRISMによる過去最高のX線分光能力を最大限に活かす研究である。具体的には、爆発前の親星である白色矮星連星の重力ポテンシャルの高精度計測や、爆発直後の高温プラズマ分光による精密ドップラー計測、および、爆発後の残骸のプラズマ診断を駆使して、多方面からIa型超新星の多様性を探る。
本研究は、Ia型超新星の多様性の起源を解明すべく、X線分光撮像衛星XRISMによる過去最高のX線分光能力を最大限に活かし、爆発前の親星である白色矮星連星の重力ポテンシャルの高精度計測や、爆発直後の高温プラズマ分光による精密ドップラー計測、および、爆発後の残骸のプラズマ診断を行う課題である。具体的には、課題i) 白色矮星連星のX線分光を通じた sub-Chandrasekhar 質量の重い白色矮星の探査、課題ii) Ia型超新星の爆発直後での即時分光観測による親星の同定と輝線のドップラー計測による非対称性の診断、課題iii) Ia型超新星残骸の高温プラズマの高分解能分光観測によるプラズマ診断を用いた SD/DD分別と撮像観測による非対称性の診断、および、課題 iv) X線分光撮像衛星XRISMの観測性能強化の4課題を実施する。令和4年度時点ではXRISM衛星はまだ稼働していないため、課題 iv)に注力し、XRISM衛星の観測性能強化として、突発的に増光した白色矮星への緊急観測対応の運用準備の作業や、衛星熱真空試験における時刻精度検証の実施、軌道上キャリブレーションに向けた他衛星との調整等を実施した。これらの科学運用準備をJAXAやNASA の研究者と協力して進め、令和4年度末の時点でJAXAの審査によって開発完了と認められるにいたった。また、XRISM衛星稼働後の課題i)ii)の準備として、XRISM衛星の Performance Verification (PV)期における白色矮星の観測計画を詳細化し、強磁場白色矮星の高温プラズマ診断や、重力崩壊型の超新星 SN1987A のプラズマ診断を通じた親星推定・非平衡プラズマ診断に関する科学検討を深めた。
3: やや遅れている
Ia型超新星の多様性の起源に迫る観測はXRISM衛星の精密X線分光の機能が必須であるため、本研究は、XRISM衛星の打ち上げ前後でフェーズが異なる。前述の通り、令和4年度までに進めてきたXRISM衛星稼働に向けた準備作業(白色矮星や超新星残骸の観測計画の詳細化や科学運用の補強など)はほぼ完了できたため、研究は順調に進展していると判断できる。しかしながら、本研究開始時には、XRISM衛星は令和4年度の打ち上げを予定していたが、当年度のイプシロンロケットやHIIIロケットの失敗を受けて、XRISM衛星打ち上げが令和5年度に延期されたため、XRISM衛星による観測は予定よりも遅れることとなった。令和4年度の進捗としては大きな遅れはないが、本来ならば令和4年度末からPerformance Verification (PV)期の観測が開始できていたはずであり、これが令和5年度後半にずれ込むため、約半年から1年弱程度遅れることが見込まれる。ゆえに、「やや遅れている」との評価とした。
前述の通り、XRISM衛星の打ち上げは令和5年8月以降に延期されているため、令和5年度前半は引き続き、Performance Verification (PV)期における白色矮星や超新星残骸の観測の準備として、プラズマモデルの詳細化や、既存のX線衛星の公開データを用いた観測的研究を実施する。また、打ち上げ後は4か月程度の初期運用が実施され、XRISM衛星の観測性能を確認し強化する期間となるため、PV期観測に向けた準備作業という位置づけで初期運用にも注力する。さらに科学観測の下準備として、国際X線衛星較正コンソーシアムIACHECに参加し、米国NICERやNuSTAR衛星、Chandra衛星や欧州XMM-Newtonとの同時キャリブレーション観測をコーディネートする予定である。予定よりも約半年から1年弱ほど遅れ気味ながら、本研究後半で実施するXRISM衛星による科学観測の成果を最大化するよう、研究を継続する。
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