研究課題/領域番号 |
20K04015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小麥 真也 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (90548934)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 活動銀河核 / 星形成 / フィードバック / 低金属量銀河 / 矮小銀河 / 銀河進化 / データベース / 分子雲 / 銀河 / 星間物質 / 電波天文学 |
研究開始時の研究の概要 |
銀河においてガスが星へ相転移する際の量的関係、「星形成則」を従来の1変数・キロパーセク分解能の関数から多変数・100パーセク分解能の関数へ拡張する。数千~1万個程度の分子雲に対して星間物質、星形成の様々な量および年齢を観測的に定量化し、多変数解析を適用することで目的の経験則を得る。近年整備が進んだ大規模データアーカイブを徹底的に利用し、近傍銀河の分子雲のカタログ化を行うことが鍵となる。星形成が周辺環境と保つ動的平衡状態を経験的に導出し、分子雲の進化過程に示唆を得、銀河シミュレーション分野に強い観測的制限を与えることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究計画では星形成の母体となる分子雲をとりまく様々な環境を定量化し、それらの指標と星形成の活動性に関して多変量解析を行うことで星間物質の循環を1つの平衡状態と捉えることを目的としている。これまでの研究を通して星形成率を主に律速しているのはダスト、分子ガス、星密度(輻射場)であることがわかってきている。 輻射場の指標として星密度が利用できるのは、分子雲環境の輻射が星の熱輻射によるものであるという前提に立つが、2021-2022年度に行った研究を通して、強力な活動銀河核が存在する銀河では母銀河内の活動核から遠く離れた領域においても銀河核からの直接的な輻射がガスを電離し、環境に大きな影響を及ぼしている場合があることがわかった。クェーサー3C273の母銀河では中性水素及び分子ガスの形成が銀河全体で抑制され、結果として星形成を抑制している可能性が高い。活動銀河核の存在する銀河で中心核の近傍ではこのようなことが起きることは知られていたが、中心核から数10kpc離れた領域でもガスが電離されていることが電波観測を通して発見されたのはこれがはじめてである。 分子ガスの指標としては従来から利用されている一酸化炭素輝線を観測しているが、金属量の低い環境では一酸化炭素輝線強度から分子ガス量への変換係数が大きくなる可能性がある。これは、通常は星間物質に吸収されてしまう紫外光が低金属量環境においては分子雲内部まで浸透してしまい、一酸化炭素分子を破壊するためであると考えられている。本研究では幅広い環境において統一的に星形成を説明できる定式化を目指しているため、一酸化炭素から分子ガスへの変換係数を低金属量環境でも校正する必要がある。太陽系近傍の1/20程度の金属量において一酸化炭素を検出した例はこれまで2例しかないが、本研究では3例目となる銀河DDO154の一酸化炭素について現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載している計画では様々な系外銀河において分子雲のカタログを環境を表す指標とともに作成することになっている。この点は従前通り進めているが、「研究実績の概要」に記述した通り、活動銀河核の強い輻射が母銀河ガス全体に対して強い影響を及ぼしたり、分子ガスを定量化する際に星間物質中の金属量がその定量方法に大きく影響を与えることが研究申請当初よりも明確になってきている。星形成をコントロールするパラメータが研究計画当初よりも増えることは研究計画内でも想定されているものであり、このような新しい知見のもと、本研究として着実に論文化を行っているところである。 分子雲のカタログ化については海外のグループが大規模なデータを用いて同様に進めており、徐々に公開されている実態がある。基本的な量(星質量、ガス質量、速度情報)については定量化の方法が研究グループによらない部分が大きく、こういった公開データを積極的に利用し、付加価値をつけている方向に移行しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」に記載した通り、海外のグループが大規模なデータを取得して分子雲をカタログ化し、公開し始めている。このようなデータは本研究にも利用可能である。本研究のプロセスとしてカタログそのものの抽出・作成に多くのリソースを割くよりも積極的にこのような公開情報を利用し、分子雲環境を表現する他のパラメータを付加価値としてつけつつ、手法として独自性のある主成分解析を適用していくことが全体としてメリットが大きいと判断できる。 さらに、本研究を進める中で独自の成果として「活動銀河核による銀河ガスの広範囲電離を電波連続波で検出した」という点がある。このようなブレークスルーをさらに推し進め、同様のケースが他にどの程度あるかについての調査も進めていく。
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