研究課題
基盤研究(C)
これまでの惑星系の母体である原始惑星系円盤に対する観測から、木星形成領域(~5 au)以遠における円盤構造の進化や、惑星形成に付随する多様性に富む構造が明らかになってきた。本研究課題では、スパースモデリングを応用した新しい電波干渉計画像合成手法を用いて望遠鏡の解像度の限界を打ち破り、これまで未到達だった地球形成領域(~1 au)における円盤の詳細な構造を明らかにする。新しい画像合成法の検証と開発を行い、これまで取得された多数のデータに画一的に適用する。物質の散逸や非軸対称性など惑星形成に関連する構造の探査と分類を行い、地球形成領域における円盤構造の系統性と多様性の調査に世界で初めて取り組む。
スパースモデリングによる電波干渉計画像合成ソフトウェアであるpriismの開発・評価を進めるとともに、それを用いた科学コミッショニングを進めた。年度中の所属変更に伴い、開発・研究環境の再構築を行う必要があり、研究計画の推進に若干の遅れが生じたが、大きなトラブルなく環境再構築を終えることができたため、研究課題の遂行に大きな遅延を発生することなく継続することができている。priismの動作においては動作環境やコンパイラの見直しも行っており、これにより従来用いていた共同利用サーバーでの解析に比べ、およそ10~100倍以上の高速化に成功できている。再構築した解析環境の動作確認のため、アルマ望遠鏡データ解析ソフトCASAを用いた、実観測データに対するCLEAN画像の作成を複数試みており、問題なく画像化が行えることが確認できた。このデータにより得られた科学的成果についても順次論文化を行なっている。priismの開発においては、輝度分布モデルを用いた動作検証を行っており、原始惑星系円盤で期待されるようなベキ状分布においては、従来のCLEANよりも構造再現度が高い様子を明らかにすることができた。また、実観測データを用いたpriismの科学コミッショニングも進めており、ある原始惑星系円盤に対する解析では、これまで見出されていなかった新しい円盤微細構造の検出に成功している。この結果についても早急な論文化を進めている。アルマ望遠鏡の最高解像度で取得されたデータに対する、画一的なスパースモデリングによる高解像度化においては、復旧した解析環境において画像化処理の前段階までのデータ処理が終了しており、今後、画像化パラメータの調整をしながら順次画像化を行なっていく。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度の所属変更に伴い、開発・研究環境の再構築を行う必要があった。観測データの標準解析ソフトウェアであるCASAの他、本研究課題で使用する、スパースモデリングによる電波干渉計画像合成ソフトウェアであるpriismの導入も行い、問題なく動作することを確認した。priismの動作においては動作環境やコンパイラの見直しも行っており、これにより従来用いていた共同利用サーバーでの解析に比べ、およそ10~100倍以上の高速化に成功できている。解析環境の整備に目処がついたため、ALMAアーカイブから原始惑星系円盤の高解像度データをダウンロードし、CASAによる一次リダクションを行い、priismを用いた画一的な画像化処理を行う準備を整えた。priismの開発検証においては、モデル輝度分布による動作検証を行なってきており、円盤で期待されるようなベキ状分布においては、従来のCLEANよりも構造再現度が高い様子を明らかにしている。この結果は共同研究を行なった学生の修士論文としてまとめているほか、学会等での発表も行なっている。実観測データを用いたpriismのサイエンス・コミッショニングも進めてきている。塚越が以前取得したALMAデータで見出された、原始惑星系円盤の数auスケールの微細構造に対し、priismによる高解像度画像の作成を行っており、この微細構造が単一ピークではなく内部構造を持つことを明らかにした。この構造の生成要因については未解明であるが、光学的に厚い周惑星円盤の渦状腕に相当する部分が見えている可能性がある。この研究成果についてはいくつかの研究会で発表を行なっており、論文投稿についても準備を進めている。関係者との定期オンラインミーティングも継続しており、引き続き開発運用においての情報交換を継続している。
解析環境の動作確認のため、いくつかの既存観測データを用いて画像作成を試みており、CASAを用いた太陽系内天体の作成や、星形成領域の分子輝線マップの作成を行なっている。またpriismを用いたサイエンスコミッショニングにおいても、新しい科学的見地が得られており、これらは個別に論文化を行っていく。研究環境の復旧も終わり、アルマ望遠鏡の最高解像度で取得されたデータに対し、画一的にスパースモデリングの高解像度化を試す目処がたったため、今後画像化パラメータの追い込みを行なっていく。得られた高解像度画像から、円盤微細構造、とりわけ地球起動領域での物理量(柱密度や温度分布)の系統性や多様性を探り、地球から木星領域における惑星系形成についての知見を深める。得られた結果については研究会やセミナーで発表を行っていく。COVID19感染対策の緩和が進み、国内外の研究会ともに対面参加のものが増えつつある。感染状況の情勢を鑑みながら、国際研究会にも極力実態参加を検討していく。輝度分布モデルを用いたpriismの評価も同時に進め、とりわけノイズに対する振る舞いの違いについての調査を行い、実観測データへフィードバックを行う。またセルフキャリブレーション法のスパースモデリングへの拡張についても開発・評価を進めていく。GPU化も含めたpriismの高速化も別途開発を進める。
すべて 2023 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (14件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 12件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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