研究課題
基盤研究(C)
本研究ではまず、十分な物理強度と冷却耐性を備えた長波長中間赤外線用 (波長 25-40 ミクロン) 光学バンドパスフィルタを実現するべく、サンドイッチ型メタルメッシュフィルタという新型のフィルタを開発し、地上・宇宙観測に広く利用可能な長波長中間赤外線バンドパスフィルタ技術を確立する。さらに開発したフィルタを用い、小・中質量星の終末期にある OH/IR 星の観測を行うことで、これらの天体で起きているとされる活発な質量放出現象 (Superwind) の継続期間を明らかにする。
本研究は、長波長中間赤外線(波長:25-40ミクロン)向けの高効率・高強度の光学フィルタを開発・実用化し、OH/IR星と呼ばれる進化末期星の質量放出現象の解明を目的とした、長波長中間赤外線における高解像度撮像データの取得の実現を目的としている。この目的のため、光学フィルタの設計と製作、観測装置への搭載、およびこれを用いたOH/IR星の観測の実施を計画している。これまでに観測予定である波長31.8、37.5ミクロン用のフィルタの設計解を得ており、このフィルタの製作、および観測装置への搭載を計画していた。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響による観測装置開発の大幅遅延に対応するため、引き続きこれを改善することに注力した。本フィルタを搭載する観測装置は、東京大学アタカマ天文台6.5m望遠鏡搭載赤外線観測装置MIMIZUKUである。本フィルタは本観測装置の長波長中間赤外線チャネル(MIR-L)に搭載するものであるが、このMIR-Lチャネルの検出器システムの立ち上げが遅延しており、その整備を進めた。具体的には、検出器本体の冷却動作試験を試験用環境下で実施し、検出器駆動プログラムおよび制御用電子回路の改良を進めることで検出器全面の正常な読み出しを実現。正しく光を検出できることを確認した。これをうけ、MIMIZUKU本体への検出器搭載も完了した。検出器以外にも、極低温環境下で動作するチャネル切り替え機構および高速視野切り替え機構の開発も急務であったが、チャネル切り替え機構は試験用環境下で、高速視野切り替え機構はMIMIZUKU本体での動作確認を完了した。これによりMIR-Lチャネルの実現が目前の状況となった。これらの整備は本研究課題で目指す観測の実現に必須の重要な項目であるが、本課題の助成金はフィルタの製作に集中する必要があったため、他の助成金等支援を利用して実施した。
4: 遅れている
本課題で開発を進める光学フィルタ、およびこれを搭載する観測装置の整備は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて大きく遅延している。観測装置の整備の遅延はこれまでの進捗により改善したが、当初の予定に比べると遅延している。
本研究で実施予定の観測は、東京大学アタカマ天文台6.5m望遠鏡、および本望遠鏡に搭載する赤外線観測装置MIMIZUKUでしかなしえない観測である。しかし、これらの整備が新型コロナウイルス感染拡大の影響により遅延しており、当初予定していた内容での観測の実現が難しくなっている。これらの整備、およびフィルタ開発を引き続き進めるが、令和六年度のMIMIZUKUの観測開始の可能性もあり、観測に関しては、本研究で開発するフィルタには劣るが別途調達を行ったフィルタを使用したOH/IR星の観測研究の可能性も検討する。
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Proceedings of the SPIE
巻: 12184 ページ: 208-208
10.1117/12.2628600