研究課題
基盤研究(C)
近年、金星探査機「あかつき」により、カメラ観測に基づく東西風速や温度の水平分布に関する観測データは蓄積されつつある。しかし一方で、電波掩蔽観測は頻回に行うことは出来ず、温度の鉛直分布に関する観測データは十分に存在しない。本研究では, あかつきに続く今後の金星探査を見据えて、地球シミュレータ上の金星大気大循環モデル (AFES-Venus) を元に開発された金星大気データ同化システム (ALEDAS-V) を用いて観測システムシミュレーション実験を行い、金星の周囲に複数の小型衛星を配置した衛星間の電波掩蔽観測の実現可能性と有効性を検証する。
金星大気は、全球を厚い雲層に覆われており大気内部の観測が難しい。金星探査機「あかつき」のカメラ観測によって、雲頂付近の東西風速や温度は明らかにされてきたが、大気の鉛直構造については十分な観測はなされていない。本研究では、あかつきの後継となる次期金星探査の候補として期待される、複数の小型衛星を用いた衛星間電波掩蔽観測観測に関する観測システムシミュレーション実験(OSSE)を行い、その観測の有効性を調査した。令和2~4年度は、衛星間電波掩蔽観測の衛星軌道の検討やそのOSSEを実施するとともに、他に次期金星探査として検討されている様々な波長帯のカメラ観測を想定したOSSEを実施した。あかつきの観測上の制約を取り払い、観測範囲や観測頻度をさまざまに変えたOSSEを行い、惑星規模の赤道ケルビン波と熱潮汐波について、その現象の再現性によって観測の有効性を評価した。これらの結果は、衛星間電波掩蔽観測の有効性をより客観的に評価するための基準となる。令和5年度は、これまでに行ってきた衛星間電波掩蔽観測観測のOSSEを精査して結果をまとめた。Lebonnois 博士 (LMD, フランス気象力学研究室)から提供を受けた大気大循環モデル LMD 金星 GCM の出力を用いた疑似観測、Ao博士(NASA, ジェット推進研究所)から提供を受けた極衛星軌道を用いて、金星特有の現象である極域のコールドカラーを適切に再現できる観測条件を探索した。その結果、高緯度の温度場を1日2回観測した軌道においてコールドカラーが最も鮮明に再現され、提案された観測が極域の大気構造を改善するのに有効であることを示した。本研究結果は、新しい金星の衛星探査計画の推進に寄与するものである。またOSSEが金星においても衛星軌道や観測計画を最適化するために利用でき、将来の観測計画の立案に有効であることを示した。
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