研究課題/領域番号 |
20K04081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齋藤 武士 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80402767)
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研究分担者 |
網田 和宏 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (20378540)
大沢 信二 京都大学, 理学研究科, 教授 (30243009)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 水蒸気噴火 / 火山ガス / 熱水系 / 自然電位 / 熱水 / 噴気 / 地磁気 / 焼岳 |
研究開始時の研究の概要 |
現在は静穏だが,活動活発化の兆候が伺える焼岳火山を対象に,噴気の観測と化学分析をもとに,火山体内部で進行する山体-マグマ-熱水の相互作用を包括的に復元する.火山噴出物や,噴気・熱水から析出する鉱物の晶出条件を決定することで,山体内部での岩石―熱水相互作用の物理・化学条件を推定し,水蒸気噴火とマグマ噴火の分岐条件の解明を目指すとともに,次の噴火活動の予測と噴火準備過程の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
地球物理学的観測に基づく火山活動予測が一部の火山で成功を収めるようになってきたものの,小規模な水蒸気噴火による災害は後を絶たず,その活動予測は火山学に残された課題の一つである。本研究では,「水蒸気噴火はどこでどの様に準備され,トリガーされ,噴火へと至るのか?」という問いに対し,火山から放出される物質の中で最も移動速度が速い噴気(火山ガス)から,山体内部を探り,次の火山活動を推測する手法の提案を目指す。長野県と岐阜県の県境に位置する焼岳は1963年の水蒸気噴火以降静穏な状態を維持しているが,活動の活発化が懸念される活火山である。本研究では静穏な現在からデータを蓄積することで,次の噴火に備えるとともに,山体内部のマグマー熱水の相互作用とその変動システムの解明を目指す。2022年度は研究最終年度の予定であったが,コロナ禍の影響に加え,5月末の山頂付近を震源とする地震活動によって7月半ばまで噴火警戒レベルが2に引上げられたため,研究の開始を遅らさざるを得なかった.その影響もあり,1年間の研究期間延長を行った.8月以降の研究の結果,5月末の地震イベントの前後で噴気の温度が上昇していたこと,マグマ性のガス成分の濃度が若干上昇したことから,山頂付近の浅部熱水系の影響が弱まった可能性が示された.また2022年度は多成分観測装置(マルチガス)を用いたガス観測を初めて行い,これまで行ってきた検知管法とのデータの比較検討を行った.その結果,両観測方法から概ね整合的なデータが得られた.加えて,南西に位置する岩坪谷噴気の結果からは高温の火山ガスの影響が最も強い可能性が示された.これまで噴気ガス分析や電磁気学的観測から推定された,山体内での熱水系の分布の偏在がさらに裏付けられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は年度当初の5月末に山頂付近を震源とする地震が多発し,その結果,2011年の導入後初めて噴火警戒レベルが2に引上げられた.入山規制中はレベルがいつ1へ下がるかの見通しが立たず,研究内容の再設定を検討し,規制範囲外から遠望観測を行ったり,DOASを用いたガス観測などを行った.幸い7月半ばにレベルが1に下がったため,その直後に入山し,北峰南噴気の観測とガス採取を行った.その結果,噴気孔の温度が2021年と比べて約10度上昇していることが分かった.またSO2/H2Sが2013年の観測開始以来最も高い値を示し,CO2,He,HCl濃度が上昇していることが分かった.深部からの脱ガスの影響が強まり,浅部熱水系の影響が弱まった可能性が示唆された.9月以降,本格的なフィールドワークを行い,その他の噴気孔も温度が上昇していることが分かった.また多成分観測装置(マルチガス)を用いたガス観測を行い,これまで行ってきた検知管法との比較を行った結果,検知管による測定値と概ね整合的な結果がマルチガスによる観測で得られた.さらに,岩坪谷噴気からは比較的高濃度のH2が検出され,高温の火山ガスの影響が強いことが分かった.これまで噴気ガス分析や電磁気学的観測から,山頂から北斜面にかけて熱水系が発達している可能性を指摘していたが,今回の岩坪谷の結果は,山頂から南西側では熱水系の影響が弱いことを示しており,山体内での熱水系の分布の偏在がさらに裏付けられたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も継続して噴気の観測と試料採取,電位の観測を行い,静穏期のデータを蓄積するとともに,山体内部のマグマー熱水系に由来する変化を探る。ここ数年の研究により,定量的な議論ができる程度のデータが蓄積されてきた。この間の焼岳は黒谷火口の活発化や群発地震活動,さらに山頂付近での地震活動の活発化など,噴火へとは至っていないものの細かな活動変化が認められている。それらの変化と蓄積されたデータとを検証することで,マグマー熱水の相互作用とその変動システムの解明を目指す。その補助として,地磁気観測や自然電位測定と行った地球物理学的観測を行う。特に2023年度はこれまでの研究データのとりまとめを積極的に行い,関連学会で研究成果を発表することで内外の研究社からの評価を得るとともに,研究成果の論文化に取り組む.
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