研究課題/領域番号 |
20K04104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 孝紀 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (00303446)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 鮮新世 / 地下水位 / 古土壌 / 土層分化 / リゾリス / インセプチゾル / アリディソル / チベット / ヒマラヤ / 中新世 / モンスーン / 古風化 |
研究開始時の研究の概要 |
チベット高原南端に位置するネパール国,ムスタン地方には,約2000万年前から現在までの一連の陸上堆積物が存在する.この堆積物は,気候変遷と強く関連して作られたいくつもの古土壌層を挟み,この古土壌層の解析によって古気候変遷史を編むことが可能である. その上で,このデータとベンガル海底扇状地における堆積物の変化との比較を行う.ベンガル海底扇状地は,チベット高原・ヒマラヤ山脈の隆起を反映して作られた同時代の堆積物であり,南アジア全体の気候変動を記録している.両者の比較によって,南アジア全体の気候変動とチベットの隆起がどのような関係を持つのか,を解明する.
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研究実績の概要 |
2023年9月中旬において,昨年度に引き続き,中央ネパール・ムスタン地域の新第三系について調査を行った.昨年度の調査地域(Tetang周辺)から,更に北部に分布するGhiling地域において,主にTakkhola層の中部~上部(上部中新統~鮮新統)の検討を行った. この地域のThakkhola層は主に,斜交層理砂岩・礫岩からなる中部層,斜交層理砂岩が卓越し礫岩を挟む上部層からなる.この地層について層厚約400mの柱状図を作成した. 中部層は主に礫質な網状河川堆積物と氾濫源堆積物からなる.上部層の最下部には湖成堆積物が見いだされ,微小巻き貝等の化石も産出する.上部は斜交層理砂岩,斜交層理礫岩からなる網状河川堆積物とその間の氾濫源堆積物からなる. これらの地層中には古土壌層が認められ,中部層は不鮮明な土層分化を示すエンティソル(Entisols)やインセプチゾル(Inceptisols)が含まれる.その多くはグライ化していた.上部層では,土層分化に乏しいエンティソル(Entisols)が多いが,砂質な河川堆積物上部には炭酸塩鉱物によって根化石が岩石化(リゾリス化)したアリディソル(Aridisols)が認められた.上部層においては炭酸塩鉱物セメントも多数発達し,間隙水がアルカリ性であったことが示される.そのため,中部層堆積時には比較的高い地下水位のもとで土壌化が進行したが,上部層堆積時には地下水位が著しく低くなり,地表域の乾燥化が進んだと考えられる.従って,Takkhola層堆積時の後半には地下水位を大きく変化させる条件,例えば降水量の著しい減少が生じたと考えられる. これまでの調査の結果,Takkhola層下部については調査地点が少なく,全体像を把握できていない可能性があることがわかった.次年度の調査時の課題としたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(2020年度)から2年度(2021年度)までコロナ禍の影響を受け,現地調査を行うことができなかったが,3年度(2022年)と4年度(2023年)である本年度において,現地調査を効率的に実施し,当初の研究計画の7割程度を達成できた.また,2022年度の研究成果については学術誌(葉田野ほか,2023; 地質学雑誌)や学会(葉田野ほか, 2023; 地球惑星連合学会)で発表しており,当地を含めたチベットの南部の高度変化について議論を行っている. しかし,本来の研究計画に比べ,現状においても遅れている状況にあるため,「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
補助期間を1年延長し,2024年度までを研究期間とした.これによって2024年9月に最終的な現地調査を実施し,問題点となっている事項の解決に取り組む.
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