研究課題/領域番号 |
20K04108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 亮吏 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (00379819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 安定同位体 / 遷移元素同位体 / 物質反応過程 / 質量依存同位体分別 / ケイ素同位体 / 質量依存分別 / エンスタタイトコンドライト / ケイ素 / 遷移元素 |
研究開始時の研究の概要 |
安定同位体は、自然界における物質反応過程を解読する為の優れたトレーサーである。安定同位体は個々の反応過程において、平衡論的同位体効果と速度論的同位体効果を生じるが、2つの同位体では、これらを判別する術を持たない。これを解決するのが、3安定同位体法である。本研究では、これまで開発してきた3酸素同位体解析法に加え、ケイ素と遷移元素の3安定同位体解析法を開発し、これを同位体分別係数の決定、天然における化学・生物反応過程による同位体分別解読に応用する。期待される研究成果は、小惑星や初期惑星系における固液気相間反応過程、初期惑星表層における生命活動痕跡解読、初期地球表層温度推定等の研究に応用できる。
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研究実績の概要 |
安定同位体は、様々な化学・生物反応過程において、質量依存分別を生じるため、自然界における物質反応過程を解読する為の優れたトレーサーである。一方で、安定同位体は個々の反応過程において、平衡論的同位体効果(EIE)と速度論的同位体効果(KIE)を生じるが、2つの同位体(=1つの同位体比)では、EIEとKIEを判別する術を持たない。これを解決するのが、3安定同位体法である。本研究では、申請者がこれまで開発してきた3酸素同位体解析法に加え、ケイ素、遷移元素等の安定同位体解析法を開発し、小惑星や初期惑星系における固液気相間反応過程、初期惑星表層における生命活動痕跡解読、初期地球表層温度推定等の研究に応用することを目的としている。 令和4年度には、マグネシウム同位体分析方法、ユークライト隕石の酸素同位体分析結果、小惑星リュウグウのアミノ酸の生成過程と炭素同位体との関係に関する論文をそれぞれ国際誌に発表した。さらに、クロムの3安定同位体分析方法を開発するために、高精度53Cr/52Cr同位体分析法の開発に取り組み、その結果を国際誌に投稿した。現在は、この成果に加え、すでに開発した非質量依存クロム同位体分析法を組み合わせることにより、3クロム安定同位体分析法の開発を行っている。クロムに加え、これまで私たちが開発してきたマルチ遷移金属元素同位体分析方法の統合化を図ることにより、極微量試料中からのマルチ同位体分析方法の開発を行い、令和5年度には、この成果を国際学会および国際誌で発表する予定である。令和4年度には、安定同位体を用いた代謝活動過程の解明を行うため、バクテリア培養実験と実験生成物の安定同位体分析方法の開発に着手した。令和5年度には、この研究を継続し、その成果を論文として発表することを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 令和4年度には、マグネシウムおよびリチウム同位体分析方法に関する論文、ユークライト隕石の酸素同位体分析結果を含む論文、小惑星リュウグウのアミノ酸の生成過程と炭素同位体との関係に関する論文を国際誌に発表した。 ② クロムの3安定同位体分析方法を開発するために、高精度53Cr/52Cr同位体分析法の開発に取り組んだ。クロム同位体分析法は、表面電離型質量分析計(TIMS)とマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を用いる方法があるが、本課題で対象とする天然試料で得られるクロム量は微量であるため、その分析が可能となるTIMS法を採用した。私は令和3年度に、非質量依存54Cr/52Cr同位体分析法を開発したが、令和4年度にはこれに加え、非質量依存53Cr/52Cr分析法、ダブルスパイクを用いた質量依存53Cr/52Cr同位体分析法を開発した。前者の結果については論文執筆中であり、後者の結果について国際誌に投稿中である。今後はこれら全ての分析法を組み合わせて、3クロム安定同位体分析法を確立する。 ③ これまで開発してきた同位体分析方法の統合化を図ることにより、極微量試料中からのマルチ同位体分析方法の開発を行った。令和5年度には、この方法を完成させ、国際学会にて発表し、国際誌に投稿する予定である。 ④ 小惑星リュウグウ試料の水質変質過程を解明するため、特に3酸素同位体変動について、マルチ同位体(水素、酸素、炭素)用いて解析した。この結果は令和5年度に行われる国際学会にて発表し、国際誌に投稿する予定である。 ⑤ 安定同位体を用いた代謝活動過程の解明を行うため、バクテリア培養実験と実験生成物の安定同位体分析方法の開発に着手した。これまでに、様々な条件におけるバクテリア培養を行うことにより、初期地球環境における生命活動過程と生命活動に必要な条件の推定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である本年度は、進捗状況②③④で示した、分析方法の開発とその応用研究で得られた成果を論文としてまとめ、これを国際学会および国際誌で公表する。これにより、本研究課題の目的の一つである、マルチ安定同位体システムの開発を確立する。さらに、現在も進行中である進捗状況⑤の課題について、本年度前期までには実験と同位体分析を終え、本年度中の国際学会及び国際誌への発表を目指す。この研究では、様々な条件におけるバクテリア培養実験を行い、生成物等のマルチ同位体分別過程を解析することにより、初期地球環境下における生物・非生物起源同位体物質反応解読のための基礎的データを得ることを目的とする。これまで遷移金属元素の安定同位体を用いた生物・非生物起源同位体分別過程の解読を行った研究はあるが、吸着や拡散などによる非生物起源同位体分別と代謝活動による同位体分別を判別することはしばしば困難とされてきた。今年度は、特に代謝活動による遷移金属元素3安定同位体分析を行い、上記の解読法が可能かどうかを判別し、その結果を論文としてまとめる予定である。
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