研究課題/領域番号 |
20K04124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
興野 純 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40375431)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非晶質炭酸マグネシウム / Nesquehonite / Dypingite / Hydromagnesite / ポリアモルフィズム / ネスケホン石 / ダイピング石 / 水苦土石 / 非晶質構造解析 / アモルファスシリカ / アモルファス炭酸カルシウム |
研究開始時の研究の概要 |
地球上にはアモルファス物質が幅広く分布している.液体のように乱れた構造のアモルファス物質は様々な構造を取ることができ「ポリアモルフィズム」と呼ばれている.しかし,原子位置の決定が困難なため,私たちはその構造だけでなく構造に起因する性質も正確に理解できずにいる.本研究は,PDF法による非晶質構造解析および第一原理計算による電子状態解析を用いて,アモルファス物質の構造を明らかにする.そして,アモルファス物質の構造の違いによって温度圧力特性が変化することを示し,どのような構造のアモルファス物質がどのような性質を持ち,地球上のどのような現象に関与しているのかを解明し,アモルファス物質の実態に迫る.
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研究実績の概要 |
非晶質炭酸マグネシウム(AMC)の結晶化過程における構造変化を,PDF法およびXAFS法を用いて調べた.AMCは,20, 60, 80 ℃で,nesquehonite (NSQ),dypingite (DYP),hydromagnesite (HMG)に結晶化する.熱分析の結果,AMCに含まれる水分子の量は,合成した温度とともに減少する傾向を示し,この傾向は結晶相と同じであった.本研究では,まず20, 60, 80℃で合成したAMCの非晶質構造を調べた.PDF解析から,20,60,80℃で生成したAMCの近距離構造には温度依存性がなく,その構造がHMGの短距離秩序構造と同一であることが明らかになった.続いて,水溶液中でAMCからNSQに結晶化する過程で,水溶液中のアルカリ金属イオンがNSQの結晶化にどのような影響を及ぼすかについて調べた.Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3の4種類の異なる水溶液を作成しAMCを合成した.実験の結果,Na2CO3,K2CO3を出発物質に用いた水溶液からはAMCから容易にNSQに結晶化したが,Rb2CO3,Cs2CO3を用いた水溶液からは,NSQの結晶化が抑制されることが分かった.また,PDF解析の結果から,AMCが沈殿直後の非晶質構造とNSQ結晶化直前のAMCの非晶質構造では,それぞれが異なる構造(AMC-I構造とAMC-II構造)であることが示され,これによってAMCが結晶化する過程では少なくとも異なる2種類の非晶質構造が存在した.最後に,炭酸マグネシウム水和物の熱分解の過程で出現するAMCの構造について調べた.実験の結果,NSQとDYPには,熱分解過程ではAMC-I構造を持つAMCが出現するのに対し,HMGでは,AMC-IともAMC-IIとも異なる第三の非晶質構造(AMC-III構造)が出現することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年目(最終年度)は,非晶質炭酸マグネシウム(AMC)の非晶質構造が複数の異なる構造をもつポリアモルフィズムについて研究を行った.Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3の4種類の異なる水溶液を用いてAMCを合成し,NSQへの結晶化プロセスを調べた結果,Na2CO3,K2CO3を出発物質に用いた水溶液からは容易にNSQに結晶化したが,Rb2CO3,Cs2CO3を用いた水溶液ではNSQの結晶化が抑制されることが判明した.また,この結晶化プロセスの過程をPDF解析で調べた結果,Na2CO3,K2CO3を出発物質に用いた場合は,AMC形成直後とNSQ結晶化直前ではAMCの構造変化(AMC-I構造からAMC-II構造)が確認できたのに対して,Rb2CO3,Cs2CO3を用いた場合は,AMC-I構造から変化していなかった.これによってAMCは,生成直後と結晶化直前では異なる非晶質構造(ポリアモルフィズム)を持つことが示された.
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今後の研究の推進方策 |
地殻の約9割を占める炭酸塩が,カルサイト・アラゴナイトCaCO3,ドロマイトCaMg(CO3)2,シデライトFeCO3,マグネサイトMgCO3である.そして,これらの形成過程において,ナノ粒子であるACC,Mg-ACC,AFC,AMCがコロイド状に発生する.AMCについては,本研究の推進によってほぼその結晶化にいたる特性が明らかになった.今後の研究の推進方策としては,ACC,Mg-ACC,AFCに焦点を当て,最終目標としては,非晶質炭酸塩が,地球上でどのような構造の多様性を持ち,それぞれがどのような特性を持ち,どのように炭酸塩に結晶化するのかを明らかにすることである.
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