研究課題/領域番号 |
20K04145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐野 晋一 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (50823259)
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研究分担者 |
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80610451)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 厚歯二枚貝 / 白亜紀 / 太平洋 / 系統分類 / 礁性環境 / 形態学的革新 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化が著しく進んだ後期白亜紀は、熱帯域に広大な厚歯二枚貝“礁”が発達し、地球史上で唯一、二枚貝が礁性環境の主役となった時代である。「どうして当時厚歯二枚貝が繁栄したのか」について、地球表層環境変動と関連させた議論はあるものの、厚歯二枚貝自体の「形態学的変革」に着目した研究はほとんどない。本研究では,厚歯二枚貝を代表するヒップリテス科と,その祖先形とされる科について,白亜紀中頃の全属の形態学的特徴を分析し、系統関係を明らかにすることにより、「ヒップリテス科は、どの地域で、どのタクサから、どのような形態学的変革を経て、派生したのか」を議論し、“温室地球”での二枚貝の繁栄の理由を探ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の対象のうち,最重要タクサであるフィリピン・カラモアン半島産ヒップリテス科厚歯二枚貝(本科最古の記録の可能性がある)については,従来,主に右殻の特徴について検討を行ってきたが,令和4年度には,石灰岩サンプルの厚歯二枚貝密集部を連続的に切断・研磨した面に観察された,合弁個体1個体の左殻部分を,三次元像としてデジタル復元し,詳細な観察を行った.本タクサの左殻は,1)右殻に発達する,複数の外層の折りたたみ構造(infoldings)の全てに対応した凹部を持ち,その外縁が右殻の内縁に一致する「落し蓋状」の外形を持つ,2)外層が非常に薄い,もしくは存在しないため,本科の標徴の一つである,左殻外層内の“空隙構造(pores and canals system)” を持たない,3)短刀のように 著しく伸長した閉殻筋支持構造(myocardinal system)を持つが,その基部は殻内部に発達した環状構造(yoke)や放射状構造(buttress) に支えられる,といった特異な特徴を持つ.3)の閉殻筋支持構造の著しい伸長は,本科よりも,本科の祖先とされるポリコニテス科に類似例が認められ,一方,1)の左殻外縁の凹部は,本科を特徴付ける空隙構造(canals)の形成場所に一致しており,その先駆的形質と見なすことが可能である.また,他の形質は,後期白亜紀後半にカリブ海地域に生息した,派生的とされるタクサに同様の構造が観察される点で注目される. 従来,左殻の殻内の形質は分類にはほとんど使われていなかったが,本研究は,左殻の形質を本科の系統分類に利用できる可能性を示している.さらに,従来,ヒップリテス科は,科の複数の標徴を持つタクサが急に出現したとされてきたが,本研究は,本科の標徴となる形質の獲得過程を議論できる可能性を示唆しており,本科の起源を考える上で重要な知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のために,令和4年度もフィリピンにおける野外調査・標本採集を実施することができず,予備調査時に採集した標本の観察や分析作業,海外での比較標本の観察のみを実施した.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の早い時期(5月)にフィリピンでの野外調査を実施する.従来の計画ではフィリピンでの調査を2年に分けて実施する予定だったが,スケジュールを工夫して2か所の産地を1度に回る計画に変更し,遅れを最小限に留める努力をする.
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