研究課題/領域番号 |
20K04152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | ヤマザキ動物看護大学 |
研究代表者 |
筒井・石川 牧子 (石川牧子) ヤマザキ動物看護大学, 動物看護学部, 教授 (00446577)
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研究分担者 |
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 生体色素 / 軟体動物 / 色彩パターン形成 / 捕食 / アンモナイト / 分光分析 / 模様形成 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の多様な色彩戦略は、5億年以上の長い進化史における視覚の重要性を示す。しかし、色彩を持つ体表は軟組織であることが多く、その進化を長大な時間軸で追うことは困難であった。一方、模様の残る古・中生代の化石貝殻からは絶滅生物の色彩や、現生まで続く系統の黎明期の色彩パターンが分かるはずだが、化石に残る模様が生息時のものである根拠はない。近年、申請者らはラマン分析によって、中生代の二枚貝やアンモナイトの色素様物質から現生色素の変性で形成されうる炭質物のスペクトルを検出した。本研究では古・中生代のアンモナイトや貝類等の色彩を客観的指標により復元し、生物間相互作用による選択圧が表現型に与える影響を探る。
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研究実績の概要 |
動物の模様の進化史についての理解は、視覚による選択圧や生物の環境応答を考える上で不可欠である。地質時代において、体表面の模様が最も保存される可能性があるものは、有殻軟体動物の貝殻である。実際に貝殻に“色彩パターン”の残る化石も少なからず報告されているが、それが生時のものであり、二次的な沈着ではないという証明が不可欠であった。それには、こうした貝殻上の色素の分子構造を理解し、その存在を客観的に判別できる分析法の確立が急務であり、この識別法の確立によって初めて、動物の模様の進化がいかに始まったかの鍵となる情報を得ることができる。貝殻色素にはその構造によりいくつかの種類が知られているが、それらについて加熱実験を行い、分光分析での時間的・条件依存的なスペクトル変化を追跡した。その結果、生体色素はその種類によって様々な熱耐性および熱変性パターンを示すことを明らかにした。また、中生代をはじめとしたいくつかの産地における堆積環境に関する考察を進めた。 貝殻色素の変性過程の理解には、色素と結合・相互作用する、あるいは有機物の変性過程の指標となるような貝殻タンパク質に関する理解が不可欠である。こうした貝殻タンパク質やその発現遺伝子解析は主にいくつかのモデル生物で進められているが、非モデル生物での報告は途上である。そこで、有殻頭足類やその他の有殻軟体動物を用い、変性の指標となる貝殻タンパクの特性およびそれらの時空間的・条件依存的な変化に関する評価研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体色素の変性実験によるスペクトル分析等は、概ね順調に進展している。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、海外の博物館における標本検討等は次年度以降に持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で得られた貝殻色素の変性過程に関する情報を、堆積物中の色素化合物から得られた堆積物の熟成度についての情報と統合する作業を進め、化石に残る色素残渣の由来を考察する。化石表面の構造の画像解析も進め、化石色素と分光分析結果、表面構造との物理化学的相関を捉え、“真の”化石貝殻色素の識別指標の確立を目指す。貝殻色素の存在が証明された化石から模様変遷の復元を行うとともに、申請者らが進める有殻軟体動物の発現遺伝子解析と統合し、模様形成の起源を考察する。更にスミソニアン博物館など各地博物館に収蔵されている標本の調査により模様の変遷を追跡し、模様形成の進化史および模様の起源を議論する。
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