研究課題/領域番号 |
20K04209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
是澤 宏之 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70295012)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 3Dプリンティング / 熱溶解積層法 / 射出成形 / 造形物 / 機械強度 |
研究開始時の研究の概要 |
射出成形法によるFDM用フィラメント製作・挙動観察可能な金型を試作し,射出成形中の溶融樹脂の挙動の観察を可能とする.次に,製作フィラメント単体の強度を高める製作条件を探索し,製作条件と破断強度および配向状態の関係を明にする. 射出成形による製作フィラメントを使用可能なFDM装置の試作する.製作フィラメントは造形中に加熱・除熱されるため,造形後の破壊強度の評価と造形条件を探索する. ここまでの結果を踏まえ,破壊強度の高い棒状の製作フィラメントを積層させて,具体的な造形物により破壊強度を計測し,包括的な造形強度を評価する.その際,造形中の走査パターンの影響なども考慮する.
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,付加製造法の一つである熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling :FDM)により得られる造形物について,射出成形金型を用いてフィラメントを形成し,その単体の機械強度の向上に基づいた造形物の包括的な機械強度の確立にある.フィラメント単体の機械強度を向上させるためには,これを形成する際,高せん断速度の付与による溶融樹脂を流れ方向に配向させる方法が考えられる.これを実現するために,射出成形法を用いる. 当該年度は,射出成形により形成されたフィラメントの機械的強度を得るための手法について検討した.配向を実現する高せん断領域は,フィラメントの表面に近い領域に分布すると予想され,樹脂流動解析の分析からも明らかになっている.これまで,フィラメントから糸状試験片(正方断面約0.1mmかつ長さ約100mm)の切出方法および機械的強度を評価するための引張試験方法を試行錯誤し,多くの時間を費やしたが実現に至らなかったことから,当該年度では新たな手法を検討した,その結果,フィラメントの表面に近い領域の機械強度であるヤング率を得ることができた同時に,ヤング率が高い傾向になることを確認した.今後の展開として,FDMでは,所望する形状を造形する際,フィラメントに熱を付与する必要性があることから,次年度以降は,実際の造形を想定し,加熱と除熱によって発生するであろう機械強度の変化の調査を実施する.加えて,実際に造形物を造形し,引張試験を実施することで,造形物の機械強度の向上の実現を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
熱溶解積層法に使用するフィラメントを射出成形法により形成することで,高せん断速度により機械的に配向された強度をもつ部分とそうでない部分との有意な差を見つけることが優先課題であると想定されたことから,当該年度もこの部分を中心に実施した.フィラメントから糸状試験片の切出方法と切出後の試験片を用いた引張試験の実施について,ダイヤモンドソーあるいはレーザ光線を用いて試料を精密に切断する方法などの複数案を検討してきたが,糸状試験片の所定部位の切り離しや糸状試験片の把持困難性のために良好な結果を得ることができなかったことから,糸状試験片の作成による強度評価の方法を放棄し,次に述べる方法を検討した. まず,軸対称なダンベル形状の試料を射出成形法により成形する.その後,穴径の異なる複数のドリルを準備し,試料の断面を中心として穴加工を実施し,貫通穴を有する試料を工具の穴径毎に作成する.作成された複数の試料を引張試験することで,試料毎にヤング率を求める.次に,得られた引張試験の結果を用い,引張試験時に材料は線形的に変形するとの仮定をおいた範囲中で,試料の断面形状を中心として層状に区分し,各層のヤング率を求めた.その結果,成形品の表面付近で形成される高せん断領域で高いヤング率となる傾向にあった.なおこれは成形時の溶融樹脂の射出速度には影響を受けていなかった.あわせて,当初想定していなかった成形品中心部分においてもヤング率も高い値を示したことから,その原因を検討中でもある.なお,実際の造形を想定した試料の加熱・徐熱による機械強度の変化および実際の造形物による強度向上の検証までには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
次年度において,実際の造形環境を想定する.FDMによる造形では,フィラメントの加熱と徐冷の2つのプロセスを経ることによって所望の造形物を得る.加熱によって軟化したフィラメントは,造形中の自然冷却により徐々に冷やされ,ガラス転移温度以下とならない内に,積み上げられる.この時,射出成形により配向(強化)されたフィラメントの配向状態が緩和されることも予想される.そのため,まず,ある一定時間でダンベル状の試料を加熱し,その後,十分に除熱した試料を用いて引張試験を実施し,機械強度を求める.制御可能なパラメータとして加熱温度および加熱時間があり,これらと試料の機械強度との関係性を得る.現段階では,加熱されることで試料の機械強度はある程度低下すると予想される.次に,前述した関係性に鑑み,実際の造形物の造形を試みる.この時,引張試験を想定したダンベル形状を造形する.実際,フィラメントの加熱と同時にこれを送ることが求められ,射出成形法で作成可能なフィラメントの全長は比較的短いことから,短いフィラメントを接合して棒状のフィラメントを準備する必要性がある.同時に,加熱時にフィラメントの配向ができるだけ緩和しない様,送り速度や加熱温度の適切な条件も検討する.なお,加熱により著しく機械強度が下がる様な場合,フィラメントの断面形状の検討も視野にいれる.また可能であれば,様々な樹脂を用いての検証もあわせて検討したい.
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