研究課題/領域番号 |
20K04275
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
堤 誠司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (10446601)
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研究分担者 |
清水 太郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (00446600)
赤嶺 政仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00835465)
尾亦 範泰 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80849258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 縮約モデル / 燃焼振動 / ロケットエンジン / LES / 振動燃焼 / 数値流体力学 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
世界の全エネルギーの80%が燃焼で得られている現状において,燃焼器は産業機器の中で最重要なコンポーネントである.反応による発熱と燃焼機内の圧力変動の連成現象である振動燃焼は,振動・騒音の原因であり,また最悪の場合,機器の破損を引き起こすわけだが,未だに未解明な点が多く,振動燃焼フリーの燃焼器設計技術の確立,また発生の予知が求められている. 本研究では,数値解析技術を利用し,振動燃焼の有無,遷移過程に関する学習データベースを作成する.そして,従来の演繹的なアプローチに加え,機械学習を活用した帰納的アプローチを併用することで,燃焼状態を予測可能な縮約モデルを開発し,振動燃焼の予知を目指す.
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研究実績の概要 |
前年度までに,典型的な液体ロケットエンジン燃焼器のモデル燃焼器であるContinuously Variable Resonance Combustor (CVRC) を対象にした圧縮性Large-Eddy Simulationによる数値解析を実施した.そして,1次長手モード(1Lモード)の振幅の増幅が確認された700Kと720Kの2ケースを対象に得られた数値計算結果を解析し,燃焼振動の発生条件を議論した.その結果,燃焼振動には以下の3つの特性時間があり,Tcomb と Tpost+Treact が等しくなれば燃焼振動が大きくなることが分かった. 1. 燃焼器内の定在波の周期 Tcomb 2. 酸化剤ポスト内を伝播する進行波の周期 Tpost 3. 進行波が燃焼器入口に到達して発生した擾乱が燃料/酸化剤のせん断層を伝播し,混合して発熱するまでの時間 Treact 燃焼振動を予測する縮約モデルには,上記の3つの特性時間を推算することが必要であることが分かったため,これらをモデル化するため,Matveev and Culickによって提案された縮約モデル(以下,Matveev-Culickモデル)を採用した.Matveev-Culickモデルは渦放出を伴う予混合火炎に関する比較的単純なモデルであり,Tpost と Treact を新たにモデル化する必要がある.そのため,酸化剤ポスト内を伝播する進行波のモデル化と渦移流を考慮する修正法を開発した.Treact のモデルに含まれる発熱率変動に関するモデルパラメータを適切に設定することで,数値解析結果と同オーダーの圧力振幅を持つ燃焼振動状態が幅広い酸化剤温度で現れ,本モデルがCVRCの燃焼振動遷移を表現しうることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初,下記の3つのステップに分けて段階的に研究を進める予定であった. ステップ①:CFDを利用し,振動燃焼の有無,遷移過程に関するデータベースの作成 ステップ②:近未来の燃焼状態を予測する縮約モデルの開発 ステップ③:縮約モデルを用いた振動燃焼の予知 ステップ①に関しては,入口酸化剤温度を660~1400Kまで変化させることでcombustion noise (燃焼騒音)から1Lモードを持つ振動燃焼の振幅変化(増幅/減衰過程)を再現することができ,振動燃焼をモデル化するために必要となる多量の学習データを作成した.このデータをもとに,演繹的なアプローチと帰納的なアプローチを利用して縮約モデルの開発に必要となる特徴量の抽出を試みた.そして,燃料と酸化剤の間のせん断層の大規模な不安性が1Lモードの発生に大きな影響を与えること,3つの特性時間があることなど,縮約モデルの開発する上でモデル化すべき物理現象が明らかになった.次に,縮約モデルはMatveev-Culickモデルをベースとし,上記の特徴量の導入を進めた.オリジナルのMatveev-Culickモデルは,酸化剤ポストを伝播する進行波(Tpos),進行波が燃焼器入口に到達して発生した擾乱が燃料/酸化剤のせん断層を伝播し,混合して発熱するまでに要する特性時間(Treact)の2つはモデル化されていなかったことから,新たにモデル化して導入した.縮約モデルにはまだ改良が必要であるが,ステップ②までは順調に進んだ.そのため,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在開発している縮約モデルのベースとなるMatveev-Culickモデルは,予混合火炎を対象にして開発された.今年度判明した3つの時間スケールのうち,燃焼器内の定在波の周期(Tcomb),及び酸化剤ポスト内を伝播する進行波の周期(Tpost)をモデルは導入できたが,酸化剤ポストを伝播した進行波によって発生した擾乱が燃料/酸化剤のせん断層を伝播し,混合して発熱するまでに要する特性時間(Treact)に関するモデルは改良の余地がある.そのため,次年度も引き続き,モデルの改良を試みる.また,振動燃焼の発生には燃料,酸化剤間のせん断層の不安定性が起因しており,不安定性の発生には酸化剤の流動変動が関係していることが分かっている.ステップ③に向けて,せん断層の不安定化にはglobal stability analysisの適用などを検討し,振動燃焼の発生条件を事前に予測することを試みる予定である.
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