研究課題/領域番号 |
20K04340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 宏幸 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90301936)
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研究分担者 |
田島 悠介 北海道科学大学, 工学部, 助教 (00849375)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 形状記憶合金 / SMA / アクチュエータ / 音声 / 音響計測 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
柔軟で単純な構造で駆動が可能である形状記憶合金(SMA)アクチュエータを,音声周波数帯域で駆動させることによって,新たな音源として利用することを目的とした研究である.従来,SMA アクチュエータは高速に駆動させることが困難であるとされてきたが,申請者らが提案してきた高速駆動手法を発展させ,高周波数帯域におけるランダム周波数入力に対応させることによって,音源として利用する方法を検討する.取り組む内容は,SMA の復元力の獲得方法に対する実験的検討,および機械学習を用いた最適駆動条件の自動調整手法の開発である.
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研究実績の概要 |
2022年度は,2021年度の課題であった,最適な入力条件の安定的な維持という課題の解決を目指すとともに,ランダムな周波数を持つ入力に対して,適切な出力を得る方法について検討した.さらに,SMAアクチュエータ構成のバリエーションとして,拮抗駆動方式について実験的に検討した.得られた結果の概要を以下に示す. 各実験装置をPCからプログラム制御できるように構成し直し,これにより実験条件を自動的かつ細かく変更可能になった.このことにより,2021年度に観測が難しかった,高い音圧が得られる領域における応答挙動の観測が可能となった.結果として,その領域に高いピークが存在するのではなく,比較的平坦な特性を示すことがわかった.このことは,最適駆動条件をシビアに追い求める必要がない可能性を示唆している.各実験機器が連携したことにより,これまで,非同期的に記録されていた各種測定値が,同期して記録できるようになり,機械学習用途も含めて,有効なデータが獲得できるようになった.SMAアクチュエータに様々な電力振幅の正弦波を入力し,入力信号の振幅と,出力音圧との関係を調査した.得られた結果から入出力関係を数式モデル化することができた.この数式モデルに基づき,フーリエ変換と逆フーリエ変換を用いた入力信号の補正によって,SMAアクチュエータの周波数応答特性の平坦化を試みた.入力信号として,振幅成分の大きさが等しい広い周波数成分からなるホワイトノイズを用いた.各周波数成分の振幅の値を補正した入力信号と,補正を行っていない入力信号に対する応答の比較を行い,発生音の周波数応答特性の平坦化が可能であることを示した.拮抗駆動方式について,いくつかの駆動条件について検討した結果,1kHz以上周波数において従来の片側駆動より高い音圧が得られたが,それ以下の低周波数領域においては顕著な差を生じないことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,機械学習を用いた最適駆動条件維持手法を年度内に確立することを予定していた.しかし,実験の結果,最適な駆動条件は比較的広い入力条件に対して達成しうる可能性が示唆されたため,モデルベースによる検討を進め,比較的良い結果を得ることができた.この手法が他の装置構成でも有効かどうかは,現時点では未検証である.その他,駆動系のバリエーションに対する検討などは順調に進展したといえる.以上のことより,当初計画の実施予定事項と比較して,取り組みはやや遅れていると判断した.ただし,研究の大目的であるランダムな周波数入力に対応した音の発生という点から見た場合,着実な進展があったと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
発生する音の音量と音質の確保が大きな課題である.音量を制限している要素として,SMAアクチュエータ以外の要素についての検証を実施する.さらに,これまで検討してきた平均入力電力,電力振幅に加え,音量と音質の両者に影響を与える入力信号の波形について,最適化の可能性を検討する.これまでに蓄積した実験データに加え,入力波形を変化させた実験から得られるデータを用い,学習的手法による最適化を試みる.
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