研究課題/領域番号 |
20K04341
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
足立 和成 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (00212514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 跳躍・降下現象 / 電界集中起因説 / 圧電セラミック / 圧電セラミック振動子 / 電界集中 / 分極反転 / 圧電素子 |
研究開始時の研究の概要 |
「跳躍・降下現象」の発見以来、その発生の機構の問題は未解決のまま放置されてきたといってよい。本研究は、「跳躍・降下現象」の物理的原因が、圧電振動子の機械共振時に特異的に起きる圧電素子内部の電界の乱れに伴う局所的な電界集中によって起きる分極反転にあることを、世界で初めて実験的かつ理論的に明らかにしようとするものであり、同現象に伴う技術的問題の解決策をも見出そうとするものである。それは同時に、圧電振動子の電気的等価回路の抜本的な見直しを示唆するものでもあり、広く圧電振動子の設計全般に関わる問題を提起するものであることから、この技術分野における大きな変革の端緒となり得るものである。
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研究実績の概要 |
以前の研究において、上下面に電極を設けた直径40mm、厚さが6mmの富士セラミックス製の圧電セラミックC-21の円板状圧電振動子の径方向一様広がり振動について、その機械共振周波数付近に限り圧電素子内部の電界に著しい乱れが生じ、局所的に電界集中が発生していることが有限要素解析により確認されていることから、跳躍・降下現象は圧電素子の機械共振周波数付近で生じる内部電界の乱れに伴う電界集中によって生じる局所的な分極反転によるものではないのか、との仮説(電界集中起因説)が立てられていた。実際、そうした円板状圧電素子の有限要素解析において、その機械共振周波数付近での分極反転を模擬することで、定性的に跳躍降下現象を再現できており、実験でも跳躍降下現象が確認されている。 今年度は、そうした以前の研究で使用したものと同じ材質(C-21)、直径だが、厚さを3mmと小さくした円板状圧電振動子について、上記仮説の妥当性の検証を、測定実験や数値解析によって行い、跳躍・降下現象の機構のさらなる解明を試みた。以前の研究と同様な有限要素解析を行った結果、電極間の距離が短いこの振動の場合、同じ印加電圧なら圧電素子内部の電界が平均的に大きくなるため、局所的な電界集中によって抗電界を超えやすくなるため、跳躍・降下現象が起きやすくなる、という予測通りの結果が得られた。そして実験でも、今年度の振動子の方が、同じ印加電圧については同現象がより顕著になる上、振動子内の最大瞬間歪みは線形弾性限界値よりはるかに小さな値に留まっていることが、振動振幅の実測値と有限要素解析による計算値との比較から、確かめられた。すなわち、この圧電セラミック(C-21)においては、跳躍・降下現象の機構の説明としては、圧電体の弾性的非線形性に起因するとの従来の説ではなく、電界集中起因説が妥当であることが、完全に支持される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧電振動子の機械的支持の不安定性を完全に克服できたことで、再現性の良い実験を行うことが可能になったことから、今年度は、数多くの信頼性の高い実験結果が得られた。このことによって、少なくともハード系の圧電セラミックであるC-21については、跳躍・降下現象の機構の説明として電界集中起因説が、強く支持される結果が得られている。コロナ禍の影響による研究計画の遅延分を、ほぼ取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ハード系の圧電セラミックである富士セラミックス製のC-21については、電界集中起因説の妥当性が確認できたが、他の圧電セラミック、とくにソフト系の圧電セラミックについても同様の結果が得られるかどうかを確認する。それと同時に懸案となっている、跳躍・降下現象の影響を回避する圧電振動子の駆動方法についても、一定の指針を得るべく、研究を進めていく方針である。
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