研究課題/領域番号 |
20K04356
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
巳谷 真司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (00747446)
|
研究分担者 |
安田 進 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (30450711)
篠崎 慶亮 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (10435802)
茂渡 修平 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (60769537)
西下 敦青 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主事補 (80904739)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 擾乱数学モデル / 低擾乱駆動機構 / 機械式冷凍機 / 擾乱抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
人工衛星を用いた天文・地球観測の高感度化等で用いられる機械式冷凍機は、冷却サイクル周波数に同期した高調波の振動擾乱力を発生する。この高調波擾乱を発生させる内部要因は内部の非線形性が要因であるとされながらも根本的な低減方法が十分に解明されていない。 冷凍機内部のどのようなメカニズムで高調波擾乱力が起こるのかを明らかにし、得られた知見により、今後の標準となり得る擾乱数学モデルの構築を行う。また、構造設計と駆動手法の工夫によって、高調波擾乱が発生しない機械式冷凍機の運転が可能な原理を試作実証する。
|
研究実績の概要 |
音響機器特性を表すThiele Small(TS)パラメータを用いてVCM実験装置を等価電気機械回路モデルで表現し、VCMの下面に伝わる振動擾乱の非線形ひずみを評価した。実測で得られた非線形特性を有するバネ定数(k)、フォース・ファクタ(b)、インダクタンス(L)のTSパラメータをVCM等価回路モデルに代入し、変位・電流・発生力のひずみをそれぞれ解析した。トータルのひずみの寄与度は、概ね、k、b、Lの順に高く、Lは殆どひずみに寄与していない結果となった。VCM実験装置の実測結果と比較した所、変位・電流・擾乱力振幅と電流ひずみはモデルとオーダ一致したが、変位と擾乱力のひずみはモデルの方が一桁近く小さい結果となった。また、KLIPPELのミラーフィルタ法と等価なフィードバック線形化手法を、VCM等価回路モデル(Affine系のシステム方程式)に適用し、変位のひずみは解析上抑えられており、それに伴い擾乱力のひずみも抑えられていることを確認し、高調波擾乱の抑制に有効であることを確認した。 また、板バネの構造ローカルモード(360~370Hz)によって励振されることで擾乱の高調波が強調されているという仮説を検証するため、昨年度試作した高剛性の新VCM実験装置のデータ取得を進めた。擾乱力を計測した結果、元のVCM実験装置と比べ高調波成分が有意に減少した。特に200~400Hzの帯域に存在する高調波成分は2桁程度小さくなっている。駆動周波数をスイープさせ、発生擾乱力のウォーターフォール図を描くことにより、構造1次モードに対応する20Hz近傍以外には構造共振の影響が排除できていることを確認した。 以上の成果をまとめ、宇宙科学技術連合講演会で2件発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
”VCMが微小な高調次擾乱力を発生し、それらが構造共振によって強調される”という仮説は、一部は説明がついたものの、未だ説明不足な点が残っている。それは、旧型VCMと新型VCM(高剛性)との周波数応答比較結果が、一部の周波数帯域で仮説に反している点である。擾乱力の計測点が解析点と異なっていることを疑っており、従来のVCM装置の下に敷設したキスラーテーブルでの計測ではなく、VCMにピエゾセンサを直接貼り付けることで高調波発生源そのものを計測できないか試そうとしている。現在、計測実験系を再構築しているところである。また、キスラー計測結果から、高調波擾乱はVCM駆動方向だけではなく駆動方向と垂直にも出ていることも分かっており、現状のモデルでは垂直方向に発生する擾乱は説明がつかない。モデル化できていない要因、例えば、単純にコイルストローク軸が曲がっている、或いは、VCMヨーク部に対してコイル部が偏心していることで磁束密度に偏りが生じ、コイルストロークを斜めに駆動させる等で説明がつかないか検討している。 電気機械的な非線形パラメータの影響を構築モデルに導入できたが、構造伝達の影響を加味したモデルとなっていない。そのため現状では、等価回路モデルで出力された高調次擾乱力に、応答周波数伝達関数をかけることで表現している。構造伝達特性をモデルに加え全体を整合させる必要があると考えており、モデル構築方法を検討しているところである。 この辺りを進めることで、変位と擾乱力のひずみが現状のモデルの方では一桁小さくなっている理由に遡求できると考えている。 アクティブコントロール手法に関して、力フィードバックでは低減できているが加速度フィードバックでは低減できていない課題に関しては、進展が見られなかった。上述したようなモデル化しきれていない点を詳細化することで真相に迫れないか引き続き検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画の、ストロークパラメータの非線形依存性の少ないショートリング組み込みボイスコイルモータを設計するというアプローチでは、擾乱低減達成の見込みが少ないことが明らかになった。また、”VCMが微小な高調次擾乱力を発生し、それらが構造共振によって強調される”という仮説は、一部は説明がついたものの、未だ説明不足な点が残った。今後、擾乱計測点の見直しや、考慮できていない発生原理のモデルへの取り込みなどを進めることで、モデルと計測結果とを整合させ、仮説を立証することを最終年度の目標のひとつとする。得られた知見を通じて、更に、力フィードバックでは低減できているが加速度フィードバックでは低減できていない理由を説明することを目指す。
|