研究課題/領域番号 |
20K04360
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松村 雄一 岐阜大学, 工学部, 教授 (20315922)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 共振制御 / モード解析 / 伝達関数合成法 / 周波数応答関数 / rank-one削減 |
研究開始時の研究の概要 |
振動騒音性能の設計には,部品間の『連成』の理解が不可欠である。個々の部品の性能を向上させても,全系の性能は必ずしも良くならない。従来は,全系での設計要件を,部品に割り付けていくことを,振動騒音の設計で実現することは困難であった。本課題では,連成を Wedderburn の定理に基づいて理解し,共振特性を自在に制御するために必要な,分系の構造変更案を導き出す方法を開発する。また,この方法をカスケーディング設計に発展させた解析ツールも整備すると共に実機でその有用性を検証し,検証過程をマニュアル化する。
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研究実績の概要 |
2023年度は,構造変更の対象ではない側の分系の振動にも着目し,rank-one削減に供する零空間の選定の冗長性の中から,様々な制約条件下で所望の共振応答低減が実現するような方法を検討した。この検討では,全系の固有モードの構成が,分系間の内力(伝達力)で強制加振された際の分系の実稼働モードに等しいことに基づき,その実稼働モードの振幅低減こそが全系の共振応答低減と密接に結ばれることを設計法に展開した。そこで,分系間の伝達力ベクトルが,そのままrank-one削減に供する零空間を張るという知見を結べば,分系の実稼働モードの振幅分布を適正化しつつ,応答を小さくするような伝達力の分布,つまり零空間を,冗長性のある解の中から選定すればよいと理解できた。次に,この知見を設計に反映する方法を研究し,零空間の選択によって一部分系のモード形を自在設計する方法や,分系間の力学的エネルギーのバランスを自在に変更するための方法,特定の分系でのエネルギー散逸を増大させる方法,協業化にある複数の企業間で共有される数少ない情報を利用して,全系共振時のエネルギー分布を分析する方法などを導き,論文投稿2件,学術講演会での発表4件につなげた。 これらの成果は,当初の研究目的に掲げた『所望の周波数に共振を移動させつつ,その共振レベルを同時に低減する方法を,数学的視点から振動工学の学術体系に組み入れられる。また,従来からの振動騒音解析技術と紡ぎ,振動騒音の低減に適した構造を簡単に案出する方法を普及させられる』という事項を具現化した成果であり,自在の共振制御に向けて様々な角度から深掘りしてきたことが形となりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究に関する外部発表実績をまとめると,以下のとおりである。2023年度には,一般社団法人日本機械学会論文集の査読付き論文として3編が掲載された。また,一般社団法人日本機械学会第32回 交通・物流部門大会にパネルディスカッションのパネラーとして招待され,当該研究の紹介を行う機会を得た.さらに,一般社団法人日本機械学会会第125 回振動・音響研究会にも招待され,当該研究の過去の成果を講演する機会を得た。これら以外にも,国内の学術講演会で4件の講演発表を行った。 これらの外部発表以外に,研究開始時に設定した2022年度の目標:「振動工学の学術体系との関係から共振現象の出現を多角的に捉えられるようにする教材開発と,モード解析の既存技術を当該研究に取り入れる方法の整備」についても引き続き取り組んでいる。この活動の成果は,一般社団法人次世代音振基盤技術研究会内の複数の研究会において講演発表されているが,複数の大学や企業の研究者との議論のための資料提供という講演スタイルを中心にしているため,ここに詳細を活字化することは差し控える。ただし,一般社団法人次世代音振基盤技術研究会の参加者の中には,当該研究で得た成果を社会実装したいという企業技術者が多く,そのために企業から岐阜大学大学院の社会人博士課程に入学した者はここ2年で2名存在し,当該研究の推進も大きな輪となりつつある。 以上を総合的に判断すると,研究自体は概ね順調に推移しており,(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究はこれまで概ね順調に進んでおり,当初計画において【研究課題の核心をなす学術的「問い」】として掲げた二つの問いの一つ:『数学的には,rank-one reductionに用いる零空間の選択は任意であるが,工学的にはその選択と共振特性の制御の関係が解明されていない。』については,ほぼ解明が終わり,論文化を通した外部発表も順当に進んでいる。一方,もう一つの問い:『Wedderburn の定理に従い,任意の零空間を数値的に与えれば,数学的には,rank-one reductionによる共振特性の制御が簡単に実現するものの,工学的には実機の構造変更で零空間を変更する方法が解明されていない』に関しては,2023年度に日本機械学会論文集に公開された二つの論文において,ばね-質点系を対象に実機として実現する方法を提示するところまでは達成できたが,実機の有限要素モデルの質量行列や剛性行列における実現方法までは未達である。有限要素モデルのアップデーティング方法はモード解析関連の研究分野で長い歴史を有し,参考文献も数多いことから,これらを参考に最終年度の研究を進め,研究課題の核心をなす学術的「問い」をすべて解明して当該研究を終えることを目指す。
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