研究課題/領域番号 |
20K04494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
三好 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (10270307)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 統計力学 / 信号処理 / 適応信号処理 / クリッピング型飽和特性 / 飽和特性 / 不感帯型非線形性 / ボルテラフィルタ / 非線形信号処理 |
研究開始時の研究の概要 |
適応信号処理はすでに半世紀以上の歴史を有し、広く応用に供されているものの、驚くべきことにその一般的な理論はこれまで存在しない。信号統計力学では統計力学的な手法、すなわち、システムサイズが大きいという仮定だけを用いることにより適応信号処理の動的・静的ふるまいの理解に迫る。これまで研究代表者らは適応の対象となる未知システムが線形である場合について解析を行ってきたが、最近の網羅的な取り組みの過程で、未知システムがある種の非線形性を有する場合でも統計力学的解析手法が有効である見通しを得た。本研究課題では、非線形な未知システムに対する適応信号処理の挙動を統計力学的手法を用いて理論的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究代表者は2021年度に出力部分にクリッピング型飽和特性を有するような適応フィルタを含む適応信号処理システムの動的・静的ふるまいについて統計力学的手法を用いた解析を行い、クリッピング型飽和特性の飽和値に臨界値が存在すること、飽和値が臨界値より小さい場合には適応フィルタは発散するが二乗平均誤差はステップサイズに依存しない値に収束すること、など興味深い多くの現象を理論的に明らかにした。2022年度はこの結果をIEEE Transactions on Signal Processingに掲載し公表するとともに、同様の手法を用いて不感帯型非線形性を有する場合についての解析に着手した。クリッピング型飽和特性がスピーカーやマイクロホンなどの現実の適応信号処理システムに含まれる構成要素の飽和特性のモデル化であるのに対し、不感帯型非線形性はB級プッシュプル増幅器や物体の摩擦と運動など現実のシステムや自然現象に広く存在する非線形性のモデルである。クリッピング型飽和特性の場合には飽和値がパラメータであるのに対し、不感帯型非線形性の場合には不感帯の幅がパラメータとなる。これまでの解析により、不感帯の幅については飽和値のような臨界値は存在しないことが数値的に明らかになった。また、クリッピング型飽和特性と不感帯型非線形性のいずれについても最適フィルタ(ウィーナーフィルタ)についての検討を行い、クリッピング型飽和特性の場合の最適フィルタが未知システムそのものであるの対し、不感帯型非線形性の場合の最適フィルタは未知システムの定数倍であることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出力部分にクリッピング型飽和特性を有するような適応フィルタを含む適応信号処理システムに関して統計力学的手法を用いた解析により明らかにされた興味深いふるまいについてIEEEの英文論文誌への掲載の形で公表することができた。また、同様の手法を用いた新たな解析として、不感帯型非線形性を有するシステムのふるまいを明らかにした。さらに、クリッピング型飽和特性と不感帯型非線形性のいずれについても最適フィルタに関する検討を行い、クリッピング型飽和特性の場合の最適フィルタが未知システムそのものであるの対し、不感帯型非線形性の場合の最適フィルタは未知システムの定数倍であることを明らかにすることができた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで適応フィルタの出力部にクリッピング型飽和型や不感帯型の非線形性が存在するモデルの解析を行ってきた。その際に用いられた解析手法はこれらの非線形性が未知システムの出力部に存在する場合や、適応フィルタと未知システムの両方の出力部に存在する場合にも適用できる可能性がある。さらには、これらの非線形性を組み合わせた非線形性が適応フィルタや未知システムいずれかの出力部、あるいは両方の出力部に存在する場合も解析できる可能性がある。これらの新しい取り組みにおいては解析的な計算が困難になることも予想されるが、その場合には数値的な計算をうまく利用することにより困難を克服できる可能性がある。今後はこれらの解析計算、数値計算を網羅的に行う。
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