研究課題/領域番号 |
20K04521
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
松山 哲也 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (70347508)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 表面プラズモン共鳴 / ライブセルイメージング / 光毒性 / プラズモン共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
生体に対する多量の短波長光の曝露は網膜傷害などの疾患の原因となることが知られており,細胞への短波長光照射によるダメージの発生機構の解明が求められている.本申請研究では,表面プラズモン共鳴による蛍光増強効果を利用した高感度ライブセルイメージング装置を開発し,光制御技術と組み合わせ,短時間に,ピンポイントで特定部位に光エネルギーを与えることができるレーザー光を生細胞に照射し,照射後の生細胞の動態を詳細に観察することにより,光毒性の発生機構を解明することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,表面プラズモン共鳴による蛍光増強効果を利用した高感度ライブセルイメージング装置を開発し,レーザー光照射後の生細胞の動態を詳細に観察することにより,光毒性の発生機構を解明することを目指している.令和5年度には電子線描画装置を用いて周期ナノディスク構造を持つ生細胞培養基板を作成し,構造作製後の加熱によるプラズモン共鳴特性の改善および共鳴波長のチューニング特性について詳細に調べるとともに,量子ドットを用いて蛍光増強特性を調べた.また,ライブセルイメージング装置を用いて観測したレーザー光照射部位でのPCNA集積を用いた新しい光毒性の定量評価法を提案し,照射波長,照射位置,細胞周期,照射強度依存性と細胞生存率との比較について論文にまとめるとともに,マウス由来の細胞であるm5s細胞の培養環境の整備と生細胞染色色素を用いた細胞核の観察を行った. 細胞培養基板の開発においては,FDTD計算を用いて蛍光増強に適した金および銀ナノディスク構造の最適化を行い,電子線描画装置を用いて最適構造を持つ金および銀のナノディスク細胞培養基板を作製した.作製後の加熱処理によるプラズモン共鳴特性の改善,共鳴波長のチューニング特性について調べるとともに,FDTD法を用いた解析を行い,加熱によるプラズモン共鳴特性の改善について理論的検討を行った.さらに細胞の染色色素と同じ波長の蛍光を示す量子ドットをナノディスク構造上にスピンコートし,蛍光増強特性を調べた結果,銀のナノディスク構造において最大4.2倍の蛍光増強効果を確認した. 光毒性の定量評価においては,レーザー照射部に特異的に生じるPCNA集積について詳細に調べ,レーザー光照射後の細胞生存率と比較することにより,短時間でより広範囲の光毒性評価が可能となるPCNA集積を利用したDNA損傷評価方法について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度には主に周期ナノディスク構造を持つ細胞培養基板の開発および熱処理によるプラズモン共鳴特性の改善,最適化とその理論的解析を行った.さらに,細胞培養環境の整備を行い,マウス由来細胞であるm5s細胞を培養し,生細胞染色色素を用いて細胞核を染色し,ライブセル観察できる環境を構築した. 電子線描画装置を用いて作製した金および銀の周期ナノディスク構造を持つ細胞培養基板に対して加熱処理を施すことによるプラズモン共鳴特性の改善と共鳴波長のチューニング特性について詳細に調べた.加熱によるプラズモン共鳴ピークの先鋭化と短波長シフトを確認し,広い波長域での細胞染色色素に対する共鳴波長調整が可能であることを示した.さらに先鋭化と短波長化について,FDTD計算を用いた誘電関数の最適化による理論的検討を行い,結晶性の向上と粒界の削減による効果である推定した. またライブセルイメージング装置を用いて観測したレーザー光照射部位でのPCNA集積を用いた新しい光毒性の定量評価法を提案し,論文にまとめるとともに,プラズモン共鳴を利用したライブセルイメージング観察を実現するために,マウス由来の細胞であるm5s細胞の培養環境の整備を行い,生細胞染色色素による細胞核の染色を行い,生細胞観察が可能なライブセル観察系を構築した.今後,作製した細胞培養基板上で細胞培養を行い,蛍光強度の比較を行うことにより,プラズモン共鳴を利用したライブセルイメージング装置の評価を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においては,これまでに開発した細胞培養基板上で実際に細胞培養を行い,ライブセルイメージングにより得られる蛍光強度を比較することにより,表面プラズモン共鳴を用いたライブセルイメージング装置の評価を行う.さらに,蛍光増強度の測定結果から,蛍光タンパク質の蛍光増強に適した構造のさらなる最適化を図り,光毒性の定量評価の研究を行う.また,研究期間中に得られた知見をまとめ,学会発表や論文作成を行う予定である.
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